100年前の女性が作った植物標本の奇跡 湯島『ポール・ヴァーゼンの植物標本展』
ポール・ヴァーゼンという女性の情熱や美意識が閉じ込められた植物標本
実際の標本を見ると、まるで植物画のように花びらや蕾、葉の向きの細部まで整えられ、ため息が出るほど美しい。当時の色合いをかすかに残した花が、2022年の真夏の東京で見られるなんて奇跡のようだ。
「フランスの湿度が低いことと、箱に入っていて日光にも当たらなかったので、ここまで美しい状態で残っていたのでしょう。一つひとつに花の名前と学名、採取場所が書いてあるんですけど、全部調べていくとラ・シャソットという当時の寄宿学校に行き当たります。文章が書いてあるわけではないにもかかわらず物語性が感じられますよね」
100年前に生きた女性の情熱や美意識が閉じ込められ、心を動かされた人の手から手へと渡ってきた植物標本。飯村さんは「作った本人がこの本と展示を知ったらきっと驚くでしょうね」と笑う。『ポール・ヴァーゼンの植物標本展』は「ATLAS antiques」にて8月14日まで、入場無料。