「BOSS」30周年 パッケージデザインから見る働き方の変化とは

30th BOSS 商品一覧

 1992年に誕生した缶コーヒーの「BOSS」。今年、発売して30周年を迎える。「BOSS」が開発された90年当時、サントリーの当時のマーケティングデータによると、まだ缶コーヒーの典型的なユーザーは肉体労働者が中心だった。トラック運転手、工事現場の作業員などに的を絞り、その飲用実態や気持ちを深堀した。たとえば、トラックの助手席での徹底的なインタビューや、タクシー運転手休憩所での中味試飲調査などだ。働く人を励まし、また、頼りになる存在の缶コーヒーになりたいと考えから「働く人の相棒」というコンセプトを規定し、理想の自分像として「BOSS」というネーミングをつくり、さらに相棒として人格化しやすいように、BOSSおじさんのロゴマークを開発した。

写真左より92年8月発売の「スーパーブレンド」、「スマート ボス -脂肪ゼロ・砂糖ゼロ-」、「ザ・エスプレッソ ボスの休日」

 そこから30年、変化する時代と働き方に寄り添い、「BOSS」からさまざまな商品が生まれてきたが、30周年を象徴する商品として発売された「ザ・ボス 微糖 上向く一服」にもボスおじさんが変わらずデザインされている。でもこのボスおじさん、実はパイプを咥えていない。その理由をサントリーに話を聞くと、「コロナ禍での仕事・意識の変化などで、長引く閉塞感に疲弊してしまいがちな世の中で、時には下を向いてしまうこともある。 “缶コーヒーを飲むときには上を向く。上を向くことで元気になれる。“というメッセージをBOSSおじさんがパイプを置いて上を眺めているデザインとして表現している。」と話す。「BOSS」30年の歴史の中には他にも変わったデザインがある。健康意識が高まって来た時代にはBOSSおじさんの全身が描かれ、スマートさを表現しているデザインや、ワーク・ライフ・バランスが叫ばれ始めた時代にはパイプを置いてBOSSおじさんがどこかへ行ってしまい、パッケージに描かれていないものなど、デザインからも働く時代の変化や商品のコンセプトが読み取れる。

 変化はデザインだけでなく、容器にも。2017年に発売したペットボトルコーヒー「クラフトボス」である。コーヒーといえば缶という既成概念取り払い、新しい市場を作った。サントリーに「クラフトボス」開発の背景を聞くと、「働き方改革が社会現象となり、仕事も多様化する中でIT系の仕事で働く人が急激に増えてた。ITワーカーの方々は缶コーヒーをあまり飲んでいないことも分かり、古臭く見えていた。一方、“人”や“手”のぬくもりを感じるアナログ的なこだわりがあることも分かり、親しみやすいボトル形状、昔のガラス瓶のようなデザインを目指した。」と語る。

 このような経緯を経て開発された「クラフトボス」は、新世代ペットコーヒーのパイオニアとして、従来の缶コーヒーユーザーの枠を超えて新規の顧客を獲得した。

 変化する働く人に相棒としてユーザーに寄り添い続けてきた「BOSS」。「BOSS」のパッケージを見ると今の時代の様相が分かるかもしれない…。