女優・梅宮万紗子 念願の初主演映画でジャズシンガーデビュー?
撮影のため、8カ月近く歌のレッスンを行ったという。
「先生にもついていただいて、毎日発声練習していました。次第に体が発声に慣れていって、先生から教わった通りにストレッチや体を温めて準備してからだと、ふーっと体の奥から声が出てくるようになったんです。自分でも自信がついて、今ではたまに部屋で歌って、一人ライブ気分を楽しんだりしています(笑)」
毎日の練習に留まらず、ぶっつけ本番でライブに立つという試練も…。
「撮影に入る少し前、音楽を担当してくださったジャズアーティストの小林創さんやドラマ―の木村おおじさんのライブにお邪魔したんですが、そこで飛び入りで歌わせてもらうことになったんです。まさに本当のデビューでした(笑)。いきなり言われて、えっ…と思ったんですけど、シンガー役として、人前で歌う経験をしてみないといけない、恥もかいてみないといけないと思いまして。お客様も優しくて、声も全然出ていなかったと思うんですけど、手拍子で応援してくださって。そういうライブを何回か実際に経験しながら役作りに生かしていったんです」
一ノ瀬監督も「梅宮さんは英語が堪能だから発音がきれい。ジャズを歌うとすごく雰囲気が出る」と太鼓判。「初めて金髪ショートにした姿で現れて、声がスパン、と出た日から“洋子”になった」と振り返る。
キャスト、映画スタッフ、音楽に協力したジャズアーティストたちが一体となった熱い現場。ロケ地・川越の雰囲気にも癒されたという。
「風光明媚な日本家屋があったりレトロでオシャレなお店もあったり。川越の方々もとても優しくて。エキストラとして参加してくださった方のお店にお邪魔したこともありました。毎日、撮影が終わってから1人、夜道を歩いてある旅館のお風呂に入りに行っていたんですけど、そこは大衆演劇をやっているそうで。常連のおばちゃんから“見たほうがいいわよ!”と勧められました(笑)」
過密スケジュールの中でも、老職人・野口藤吾を演じたベテラン俳優・大森博史との時間は貴重な経験となった様子。
「大森さんは、私がとても尊敬している自由劇場の先輩で、私の先輩たちも大森さんから多くを教わってきたと語る、伝説のような方。大森さんが仰ることすべてが学びになっていて、小さな学校みたいでした。脚本に書かれている一つの文から、どこまでも世界を広げていくアプローチを伺って、本当に圧倒されました。今回、初めてのことも多くて、不安な気持ちも少しあったのですが、大森さんから“役が来るということは、できるということ。自分の細胞がその役のことを知っていると思って演じてみるんだ”と言われた言葉を、今も大切にしています」
再び街に明かりが灯れば、そこには仲間たちが集うかけがえのない時間が訪れる。
「私にも、何でも気兼ねなくお芝居のことを語り合える仲間たちがいて、とても大切な場になっています」とリラックスできるホームを持ちつつ次なる目標は「海外作品にも挑戦してみたい」とさらなる意欲。「最初はかけ離れた役どころと思っていましたが、今はこれが私なんだと言える作品になりました」と語る表情に、洋子のしなやかな美しさの源泉を見た。
(TOKYO HEADLINE・秋吉布由子)