〈サ活は、デートになる〉サウナと銭湯で男女のマンネリ解消【錦糸町 黄金湯】


 サウナというものは、男の趣味だと思っていた。

 だって、近くの銭湯にサクッと行くと言っても、女子はいろいろと入用だ。クレンジングや髪を傷ませないシャンプーを持っていきたいし、ドライヤーだって時間がかかる。男性ほどは、全然気軽じゃない。

 だから、自分がここまでサウナにドハマリするとは思っていなかった。そう、これはサウナに魅せられたサ活女子とそのパートナーの「サ活デート」の日々を綴るものだ。

 

女性はやっぱり荷物が多い…


「サウナが流行っているらしい」ということを知ってから、もう何年か経つという人も多いだろう。サウナって流行するものなのか、と当時不思議な感覚だったことをまだ覚えている。テレビでも軒並み特集が組まれ、都心の人気サウナがある銭湯は、整理券まで出るところもあるというのだから驚きだ。

 しかし一度流行に乗り遅れてしまうと、今さら感があるし自主的に取り組みづらくなったりもする。そんな理由で「いや〜いうても、サウナでしょ」とトライしていない人は、男性よりも女性に多いようだったし、自分もその1人だった。

 そんな折に、風呂が壊れた。家で入れないのだから外に行くしかないということで、せっかくなら、と近所のサウナが有名な銭湯に行くことになった。

 アメニティが何があるか分からないのが懸念点だったが、今はサウナ用の有名ポータルサイトもネットに存在していて、銭湯にどんなアメニティがあるのかまでまとめられているらしい。女子にとっては、めっちゃ便利だ。

 ポータルを見て、足りないアメニティ類をバラエティショップで買って、銭湯に向かうことにした。

 

サウナポータルでも人気の錦糸町「黄金湯」へ

 向かったのは、錦糸町「黄金湯」。近所だからという理由で向かったが、どうやら人気の店舗らしい。戦前から営業していた老舗店舗が、2020年にリニューアルオープンしたばかりということもあって、外観も今どきな感じ。中から出てくる人たちも、年齢層が幅広い。

 金曜の9時半頃店につくと、サウナ室は満員とのことで10時半からの予約になった。サウナが予約制なんて!とびっくりしたけど、サウナに行き慣れている人からすると「予約も何もなく、サウナ室満員で入れない」という状態よりは予約で管理してくれた方が嬉しいらしい。

 錦糸町なら、時間が余っても入れるお店もたくさんある。しかし、サウナ前は満腹にしない方がいいと言われて、仕方なく軽く中華料理屋で餃子をつまみながら待つことに。もちろん酒気帯びも厳禁なので、華金のテンションをぐっとこらえる。

 餃子を食べながら、パートナーがサウナの入り方を説明してくれた。いわゆる「サウナ→水風呂→外気浴」というやつ。温冷交代浴、と言われてもやってこないとピンと来なかったから「へ〜」と聞き流し、気もそぞろに銭湯に向かった。

 サウナ料金は、男性970円、女性770円。男女で来ている人も意外といたが、予約表を見ると、サウナ室も男性より女性の方が空きやすいらしい。なんだか色々得した気分。

 黄金湯は脱衣所もキレイで、女子的には心がおどるものがあった。昭和レトロな雰囲気もいいんだけど、やっぱり真新しさや整頓されたレイアウトは安心する。銭湯の中も白基調で、懐かしさと今らしさが混ざった安心感があった。

 

サウナビギナー女性の物思いと、女性ならではの達成感


 身体を洗ってサウナに入ろうとすると、急に緊張した。だって、サウナなんて今までたわむれにしか入ったことがなかった。誰だかが「サウナは水が出てるだけだからダイエット効果はない」とかいい出してからは、入る意味さえ分からなくなっていた。

 でもたしかにここ数年前から、女湯に入ってもサウナ室に入っていく人数は増えていることは感じていて、しかもその中にはスタイリッシュでおしゃれそうな女子、身体のキレイな女子が多いことは気になっていた。だからこそ、意識の高い趣味のように感じていたのもたしかだが。

 金曜の最後の時間帯ということもあり、サウナを利用している人は若い女性が多かった。黄金湯の女性サウナの定員数は3人。ドビギナーが混ざるのは怖かったが、見様見真似で中に入った。

 サウナに籠もりはじめてすぐ気になったのが、サウナの高温は髪や肌にいいのだろうか?ということ。黄金湯の女湯は「セルフロウリュ」というシステムを取っていて、自分たちでストーンに水をかけて温度を調整する。その日は80度くらいの温度になっていたが、ビギナーからすると高いのか低いのか分からない。でも、サウナに入る人々がサウナハットをかぶることは知っていたので、慌ててタオルを髪と顔に巻きつけた。

 髪も肌も、女の命だ。これからサウナに行くなら、上手なケア方法を見つけていかないといけない。

 キョロキョロおどおどしながら8分耐えて外に出た。黄金湯の水風呂は20度。これはさすがに、プールくらいの温度だということが分かり安心する。おっかなびっくりかけ水して水風呂に入ったけど、初めての水風呂は身体が凍るような思いだった。その後、椅子に腰掛けてみたけど、まだみんなが言う「ととのい」というものは来ない。

 でもこれがどうだろう。2回3回と繰り返すと、サウナにも水風呂にも慣れてきた。ととのいはまだ分からなかったが、なんだかこれが嬉しかった。「男がすなるサウナも、女もしてみむ」として、自分がそれを実践できているということが、それだけで嬉しかったのだ。

 昔、仕事で昆虫食にトライしたことがあったが、その時にも同じ快感があった。同性の中には嫌がる人もいる中で、それが実践できた自分。一つの特殊能力を得たような、そんな気持ちになれた。

 

サ活はデートになる?いつになく捗る、互いの体験談

 

 ととのいはまだ分からなかったけど、俄然サウナに興味が湧いた。とりあえず「自分にもできる」ということが分かっただけで、大収穫。小金湯の女性脱衣所にはドライヤーが3つもあって、しかも無料。ロングヘアを乾かすには、家でもドライヤーを15分以上する人もいる。ドライヤーのポテンシャルは、女子にとってけっこう重要だ。

 風呂を上がるとパートナーが先に外のベンチに座っていて「サウナ、どうだった?」と聞いてくる。「まだ分からないけど、とりあえずできた」とか「男湯は水風呂がキンキンでさ」とか、サウナ室にどんな人がいたとか、そんな話をしながら夜ご飯とビールを求めて駅前の居酒屋に入った。錦糸町は大衆居酒屋が多いので、風呂上がりのすっぴん飲酒もそこまで気にならない。

 サウナと銭湯で、男女がこんなに盛り上がって話せるとは思っていなかった。サウナはどちらかといえば男の趣味で、だからこそ女湯のポテンシャルは、あまり聞いたことがないというのだ。男湯と女湯では、場所によってはサウナの設定も、風呂のサイズも違う時があるという。お互いに同じことを体験しているのに、別々の感想が持てるから話が止まらない。

 しかも、銭湯終わりはメシも酒も捗る。同じ時間に環境の違う体験をして、その内容をおいしいお酒と一緒に語らう。え、これはもうすごくデートじゃん。そう感じてしまった。

 毎週末を2人で過ごしていると、行く場所もなくなってくる。大人になると、観光地だけを目的に小旅行に行くのも難しい。でも、サウナと銭湯はリラクゼーションだ。昔から女は風呂が好き、というのは定説だが、それ以上に現代人は「疲れた身体を癒やす」ことを切望している。男女でのサ活は、デートのマンネリを打破する令和のネオ趣味、ネオデートなのだ。

 こうして、私たちのサ活デートは始まった。男性諸君、ぜひ彼女に「リラクゼーションとしてのサウナ」を布教してほしい。女性はぜひ、銭湯の近くで素敵なごはん屋さんをSNSで検索してみてほしい。デートって、そういうのでいいんです。ただし女性の中にはすっぴんを恥ずかしがる人もいるので、まずは彼女のすっぴんを見慣れるほどの関係値の方に、おすすめしていきたい。

 

(取材と文・ミクニシオリ)