利益率30%で書店を元気に! “炎の講演家” 鴨頭嘉人と『コミュニケーション大全』の挑戦
“今の出版業界の問題は利益構造じゃないか”
鴨頭「僕たちは “今の出版業界の問題は利益構造なんじゃないか” という結論に至りました。書店は1冊販売して本体価格の20%の利益ではもう立ち行かないんです。出版社が自ら新しい取り組みをしないと、いくら取次や書店だけが頑張っても利益構造を変えることはできません。それなら新参者の僕たちがやるしかないということで、書店さんに10%利益を多く分配する契約書を作って取次大手に交渉しに行ったんです。すると “素晴らしい取り組みですね。システム上、できるかどうか確認します” と言われて拍子抜けしました(笑)。
実は取次は取次で原油高やドライバー不足で運送費がどんどん上がっているところに、出版社からも書店からも利益配分を多くしてほしいと言われて苦しかった。そこに僕らが “書店にも取次にも利益を多く分配します” と言ってきたわけですから、 “この人たちは一体どうしちゃったんだろう” と思いますよね(笑)」
吉村「口座開設の交渉は、鴨頭と僕が一緒に回って直接話を聞いてもらいました。普通は取次が新規の版元(出版社)さんに条件を提示すると “こんなに安いのか” と驚かれるのですが、それより下の条件をこちらから提示したので “あり得ない” と言われましたね(笑)。でも、お互いが “出版業界の利益構造を変えなければいけない” と考えていたタイミングで条件を提案したので、乗りやすかったんじゃないかと思います。トーハンも日販(日本出版販売)も “一緒にやっていきましょう” ということになりました」
鴨頭「よく “そんなことをして大丈夫ですか” と言われるんですけど、僕はある種の勝算があったからこそ今回の出版社を立ち上げました。僕は著者でもあるし、出版レーベルを持っていたので、本を売りたい時はいつも広告を打っていました。大手新聞社に広告を頼むと全5段(縦5段、横幅1ページ分のスペース)で100万円以上するし、電車広告は高いと1000万円以上するわけです。だったらその広告費を書店さんの利益に乗せて、 “この本を売ったら利益が出るな” と思って頑張ってくれればいいと思ったんです」
こうして取次と口座を開設し、書店に販売価格の30%を分配する出版社「鴨ブックス」が立ち上がったのである。(後編は11月3日に配信予定)
(TOKYO HEADLINE・後藤花絵)