古舘伊知郎、糸井重里と前橋でトーク プロレス実況は「何ひとつ意味あること言ってない(笑)」

旧知の糸井とのトークに話が止まらず「体感時間的には10分くらい」と古舘

 古舘は糸井のコピーを「若者っておいしいこともうれしいことも嫌なことも “ヤバい” で包括しますが、〈おいしい生活〉はその元祖。もっとすごいのは沢田研二さんの『TOKIO』で、何でフランスのシャルル・ド・ゴール空港で見た『TOKIO』というスペルをああいうふうに転写できるんですか」と絶賛し、糸井が「古舘さんが『TOKIO』という文字を見たら、どう大盛りにするか考えると思うんですけど、僕は捨石みたいに脳のどこかに置いておいて、いつか何かと出会う日を待っている。石川ひとみの『まちぶせ』状態です」と解説するひと幕も。

「言葉をてんこ盛りにするとイメージが残りますが、僕らの場合はもう少し突き抜けた何かが仕事になる。そうした時に短くするというのはひとつのやり方なんです」という糸井に、古舘は「プロレス実況は過剰にイメージを残したいがゆえにやっていて、今ふと浮かんだのは88年、横浜文化体育館のアントニオ猪木対藤波辰爾の師弟対決。当時はそういう意識もなかったけど、ものすごく過剰で何ひとつ意味のあることを言ってないんですよ(笑)」とその場で実況を再現し、会場は拍手喝采。糸井が2人の違いを「実況というのは2~3分の時間の芸術で歌に近い。僕がやっているのは、あえて言えば “あだ名” かな」とまとめた。

自身のコピー作りを「言葉を捨石のように置いておいて、何かと出会う日を待っている」という糸井

 古舘は自身の過剰さを「1988年に『トーキングブルース』というトークライブを始めて、原宿のクエストホールというところに350人くらいの方が詰めかけた。調子に乗って2時間半の約束を4時間くらいやったんです。そうしたら300枚くらいアンケート用紙が戻ってきて、すべて “腰が痛い”  “首が痛い”  “トイレに行けない” と書かれていた(笑)。バカ丸出しでしょう? でもしょうがない。僕の場合はてんこ盛りしかなくて、糸井さんのように言葉を凝縮していく世界というのができないんです」と表現して笑いを誘った。

 最後、10分前のカンペが出たところで「このまま4時間……」と不安げな糸井に、古舘は「体感時間的にはまだ10分くらい」とケロリ。糸井が「どこかで続きをやりましょう」というと、古舘は「ここからが面白かったんですよ! 滑り出しからセカンドスタートで、ここからトップギアを入れるところ」と訴えた。

「前橋BOOK FES 2022」は前橋市のまちなかエリアにて30日まで。