Web3.0領域の若手起業家を直撃! なぜチャレンジ? いま直面している課題は?

microverse株式会社 代表・渋谷啓太

 いま、世界で多くのスタートアップが生まれている「Web3.0」(※1)。日本でも今年6月7日に閣議決定された通称「骨太方針2022」でWeb3.0の推進に向けた環境整備を掲げており、同領域での起業に興味を持つ人が増えると予想される。Web3.0領域にいち早く挑んだ若手起業家に話を聞いた。

microverse株式会社 代表・渋谷啓太氏 (撮影・上岸卓史)

——学生時代から起業を志していた渋谷さん。大学3年生のときに経済的な理由で休学したことを機に起業を決意したという。

「海外のNFTの盛り上がりを見て、学生時代からブロックチェーンに興味を持っていたこともあり“これだ”と思いました。この世界のことを学ぶにはなるべくトップの中に入って学ぼうと思い、double jump.tokyoという、日本で一番実績のあるNFTのスタートアップに入り1年ほど修行させてもらった後、今年の1月にmicroverseを立ち上げました」

——5月にローンチした「Stella」は暗号資産を保有していないユーザーもNFT販売や購入ができるソリューションサービス。

「Stellaは、NFTプロジェクトのための必要な機能がそろったオールインワンソリューションです。NFTをファンに販売したいとか、ライブの来場者に記念NFTを配布したいというときに、発行や販売、管理など必要なサポートがAPIベースでそろうサービスになります。デジタルコンテンツやNFTをクレジットカードで購入可能で、事業者がNFT販売をするときにもウォレット、暗号資産が不要。ブロックチェーンを利用する際の“ガス代”も弊社負担になります。一般的に暗号資産なんて持ってないですよね。誰もが当たり前に、ユーザーが“ウォレット”を持ち、自分で暗号資産のやり取りや管理をして“ガス代”をネットワークに払いブロックチェーンを使いこなすことができるだろうという前提であることが多いのですが、まだ現状それは難しいかなと思い、当初から考えていたアイデアです」

——今後NFTはどんな未来を拓く?

「今はまだ“NFTの価値が高騰するかも”というような投機的なイメージで語られることが多いですが、これからはどんどんNFTプロジェクト発のIPやコンテンツが作られるようになると思います。今はまだ個人クリエイターが製作費を集める方法の一つという印象が強いですが、ゆくゆくは、映画スタジオやゲーム制作会社が本当にクオリティーの高い作品の製作に、最初からNFTを発行して市場からお金を集めつつファンのコミュニティーを作り、大きなIP やコンテンツを生み出していく。発行されたNFTは二次流通の過程で制作側やクリエイター側にも利益が還元され、作品が公開されればまた収益が出る。NFTの資産性を考えれば、NFTを購入して作品を応援したファンも利益を得るかもしれないし、自分は初期から応援したファンだというアイデンティティーをNFTで証明できる。

 そして、SBT(ソウルバウンドトークン)という“人に渡せないNFT”が普及すれば、アイデンティティーの証明、信用保証として活用するような未来もある。自分の能力や経歴をSBTを使って証明し、そのSBTが入ったウォレットとサービスをつなぐことで信用保証となり、お金を借りられやすくなったり、仕事探しもよりスムースになるという使い方ができるようになる」

——Web3.0起業へ向けてのアドバイスや提案を。

「Web3.0担当のVCでも最新の情報を追うのが大変なほど日々、情報が更新されていく世界。とくに法律や税のことはしっかり情報を追っておきたいですね。現在各所で議論されているとのことですが、今はまだ法人が暗号資産を保有する場合、取得時と期末で生じた価格差に対しても課税されるので、莫大な差額が出たりすると大変なことになるんです。また、その暗号資産がガバナンストークンの場合、手放せばそのプロジェクトでの投票権を失うことにもなるので容易に売ることもできない。このような税制周りの事情もあって、海外で起業する人が多いんですよね。僕は、東京でWeb3.0特区を作ったらどうかと思うんです。税制が整備されて、IPやコンテンツブランドのある日本という土壌で、シリコンバレーのように、海外の優秀なWeb3.0人材が集まってビジネスができるのならば、それにお金をかけてもリターンは大きいと思う。これは一企業ではなく、中立である行政にぜひやってほしいです」

 

※本インタビューは2022年8月に行ったものです

microverse株式会社
2022年2月創業。5000万円の資金調達をシードラウンドで実施。NFTプロジェクトをサポートするオールインワンソリ
ューションサービス「Stella」を運営するほかNFTのプロデュース、販売支援を展開。「2022年 すごいベンチャー100」(東洋経済)選出【URL】https://microverse.co.jp/