堀潤、三遊亭鬼丸ら次世代がん検査を語る「BEYOND 2020 NEXT FORUM」番外編

 2020年以降の日本の活性化を目的に、さまざまなテーマのもとで各界の有識者が意見交換を行う「BEYOND 2020 NEXT FORUM」。テーマのひとつである「次世代ライフサイエンス」について、ジャーナリストの堀潤が線虫がん検査「N-NOSE(エヌノーズ)」を開発・販売するHIROTSUバイオサイエンスの広津崇亮代表取締役と、6月に前立腺がんステージ2を公表した落語家の三遊亭鬼丸に話を聞いた。

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写真左より「BEYOND 2020 NEXT FORUM」メンバーの堀潤、広津崇亮代表取締役、三遊亭鬼丸(撮影:須山杏)

堀潤(以下、堀)「今日は “次世代ライフサイエンス” をテーマにお集まりいただきました。まずお聞きしたいのは、次世代のライフサイエンス分野の技術をどう世の中に浸透させるのかということです」

広津崇亮(以下、広津)「私はもともと九州大学で助教をしていたので、発明することは得意だったのですが、その発明をどう世の中に広げていくかと考えると、大学ではできないことがたくさんありました。いろいろな選択肢があった中で、ベンチャー企業を立ち上げて自分が社長になるというやり方で広めようとしています。

 日本の大学には、世界に誇れる素晴らしい技術が数多くあるのですが、大学と産業界につながりがないので世の中に広がりません。そこをどうしたらいいのかと考え、私の取った行動は “まず自分で産業界とのつながりを作る” ということでした。もしそのやり方がうまくいって、後に若い人たちが続いてくれると、世の中が変わっていくのではないかという思いがありました」

次世代を担うライフサイエンス技術に興味津々の堀潤

「線虫の研究はいつ頃から始められたのでしょうか」

広津「線虫そのものの研究は大学院に在籍していた頃からです。もともと生物の研究がしたくて酵母の研究室にいたのですが、アメリカ帰りの指導教官から “これからは線虫が流行るぞ” という話を聞いて、これは面白そうだと思って研究を始めました」

「そこからどのように試行錯誤して線虫がん検査の技術に結びついたのですか?」

広津「『N-NOSE』は線虫ががんのにおいを検知する技術ですが、当時は線虫の交尾行動の研究をしていました。卒業後に就職した会社を退職し、改めて大学院に進んだ時にたまたま線虫の嗅覚というテーマに出会い、論文が英科学誌『Nature』に掲載されたことで嗅覚が専門になりました。

 7~8年前に自分の研究室を持つ機会があって、線虫やその嗅覚の研究者がたくさんいる中で研究費を獲得するために考えたテーマのひとつが “がん” でした。がん探知犬の話は聞いていたので、犬と同じくらいの嗅覚を持つ線虫だったらいけるんじゃないかと思いついたのです。線虫は基礎研究の研究材料に使う生物ですが、せっかくの優れた嗅覚を人間のために生かしてもいいんじゃないかと考えました」

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