寺島実郎が語る「激動の時代、東京の『都市新中間層』に伝えたいこと」
日本再生の鍵を握るのは都市部に暮らす新中間層
──主にどういった方をターゲットにしているのでしょうか?
「この番組の狙いの1つとして、『都市新中間層』に見てほしいというものがあります。今の都市新中間層というのは、地方から東京に出てきて戦後の日本を支えてきた団塊世代の孫に当たる世代の若者で、今まさに大学の門を叩き始めています。彼らの考え方や物事の捉え方がこれからの日本を大きく左右するわけですから、その年代層の人たちに対して、どのような問題提起ができるか。大学の学長もしている私にとっては、ある意味『戦い』でもあります」
──そうした今の都市新中間層に対して具体的にどのような問題意識をお持ちですか?
「戦後の日本人というのは、PHPの思想を生きてきたのだと思っています。PHPとは“Peace and Happiness through Prosperity” という英語の頭文字で、 “繁栄によって平和と幸福を得る” という意味です。しかし、昨今の状況下で実際そうではないということを我々は思い知らされています。しかも、日本人にとって一番の心の支えだった経済的な豊さも、日本の1人当たりGDPが世界30位に落ちようとしていることが象徴しているように失いかけています。そうなった時に将来の日本を担う今の都市新中間層は何を目指して歩むべきなのか。重層的に視界を広げて、方向付けをしていこうというところに、この番組の特色があります」
──そうした都市部の視聴者が、この番組を見てどのように考えてほしいですか?
「特段難しく考える必要はなく、むしろ『考える前に行動せよ』と投げかけたいと思います。例えば、都市部に暮らす人たちはお金さえ払えばコンビニやスーパーなどでいくらでも食べ物が買えると思っています。しかし、当然ながらお米一粒でも、それを作る生産者がいます。そのことを知識としてではなく、自ら田植えや稲刈りに参画してみたりして自分の手で土に触れ “食べ物はこうやって作られているんだな” と実感し、気づくことが大事なのです。ほかにも、都市部特有の貧困の問題に自ら支援活動に参加するなどして、直接的に向き合うこともいいでしょう。
実は、私の活動拠点であり、この番組の収録場所でもある『寺島文庫』がこれらの活動の基点ともなっています。だから私個人としては、番組を通じて寺島文庫の活動の総体をどこまでにじませて伝えていけるかということがとても重要で、それこそこの番組を放送する一つの意味でもあります。結果的にそれに共感する視聴者が、付いてきてくれている感じはします」