寺島実郎が語る「激動の時代、東京の『都市新中間層』に伝えたいこと」
今こそ健全な危機感を取り戻して、耳をそば立てよ!
──番組は、第3日曜日が寺島さんの解説、第4日曜日が対談という構成になっています。これまでも興味深い方がたくさん出ていますが、今後はどのような方に出てほしいですか?
「この番組では、伝えるべき情報を伝えるという原点に立ち返った人選を心がけています。例えば、地方自治体の首長やベンチャー企業の若い経営者、米国・中国・ロシア・中東などの地域情勢の専門家など、この方の話をぜひ聞いてもらいたいと思うゲストに出演していただきたいと思っています。SNS 時代の今、情報に対して受け身で、主体的に物事を考える訓練ができていない若者が多い中、そうした人たちでも思わず耳を傾けて聞いてみたくなるような、人生に本当にプラスになる情報を、ゲストとの対話を通して提供できればと思います」
──最後に、2022年の総括と2023年の展望をお聞かせください。
「これからの日本は、おそらく明治維新や敗戦後の日本に匹敵するほど厳しい局面に突っ込んでいくと予想されます。その時に、特に右肩上がりの経済成長の残影を引きずった世代の子どもにあたる都市部の若者たちは、きっと血相を変えると思います。でもそれはチャンスでもあるのです。いまこそ健全な危機感を取り戻して、耳をそば立ててみよ、と。
幕末維新の時の若者は、世界はどうなっているのかをその目で見るために、草履を履きつぶして長崎まで行きました。戦後の日本においても、生きることに必死で、一人ひとりに大局観がありました。しかし、今の若者は、歯を食いしばって、何かをやり遂げなければいけないと思うことに出会えていないことが多く、『イマ・ココ・ワタシ』の価値観に浸ってしまっているように感じます。
一番伝えたいことは『もう一歩深く考えよう』ということです。弱音を吐いている場合ではなく、もう一歩踏み込んで、もっと深く考えることが大切です。現実に私自身がそういう経験をしています。大学院卒業後、三井物産に就職しましたが、その後、会社が社運を賭けて進めている一大プロジェクトがイラン革命(1979年)とイラン・イラク戦争(1980〜88年)に巻き込まれてしまいました。私は中東を専門にしていたわけでも、特に中東に強い関心があったわけでもなかったのですが、このプロジェクトに関わることになったのです。会社が倒産するかもしれないという危機感の中で、私は苦闘しながら、世界中の中東問題の専門家を尋ね歩くところから始め、イスラエルに張り付き、中東各国に何度も足を運びました。このことをきっかけに、中東情勢を探究する仕事に没頭し、その後赴任したアメリカでも国際情報の仕事を続けることになったのです。この中東とアメリカでの経験は、間違いなく今の私を形作っています。
そういう経験をしたからこそ、時代の中でもがいている都市部の若者たちに対して、私が見て、感じ、深く考えたことを、この番組を通して伝えなければなるまいと思っているのです」
(取材・文:いからしひろき)