小池百合子都知事に聞く 「困難がダブルで来た」2022年 東京の現在地、そしてこれから

 

―― 次に、知事も積極的に行われているSDGsの達成に向けた動きについて教えてください。

 SDGsには、いろんな切り口があります。都は持続可能な社会を脅かしている2つの危機、気候危機とエネルギー危機、これらを乗り越えるために脱炭素化を進めていかなければなりません。その鍵のひとつが太陽光発電、もうひとつが水素になります。

 日本における太陽光発電は技術的には非常に進んでいるので、それらを活用して進めていきます。東京は、建物が集積しているため、メガソーラーということではなく、空いている家々の屋根の活用が有効です。以前、日本に住んでいるドイツの方に聞かれたことがあります。「なぜ日本人は屋根を空けているんですか」と。

 都内の既存建物で、太陽光発電設備を設置している比率は、日照条件が適した屋根のたった4%。96%の余地があるということになります。都は2025年の4月から、事業者(ハウスメーカー等)を対象に、新築住宅への太陽光発電の設置義務化を目指しています。自宅を買うというのは一生の買い物です。そのなかで経済的なメリットとして、4kwの太陽光パネルを設置する場合、都の補助を利用することで、初期費用を6年で回収でき、中長期の収支は黒字になることも知っていただきたいと思います。

 太陽光発電は、災害時に自宅で電力を使えるというメリットもあります。私も自宅に太陽光パネルを設置しているのですが、東日本大震災の時は発電した電気が自宅では少ししか使えない状態でした。それは制度がそうなっていたからなのですが、今は改正されて自宅で使えるようになっています。さらに我が家では、V2H(Vehicle to Home/ビークル・トゥ・ホーム)といって蓄電池ともいえるEV(電気自動車)の電力を自分の家で使えるようなシステムになっています。これで家が自立した発電所になりました。太陽光は非常にポテンシャルが高いと思います。

 そして水素です。先日、エジプトのシャルム・エル・シェイクで開催されたCOP27の首脳級の会議に出席し、東京都の水素の取り組みを発信してきました。こうした会議が設けられているということは、世界が水素社会の実現に着目していて、そこが国際的な競争の焦点になることを示しています。

 水素は大規模で長期間の貯蔵が可能で、再エネの発電量の変動を支えることができるため、いろんな意味で有効です。海でも水素が使えると、先日世界初の水素燃料旅客船にも乗ってきました。とても良い走りでした。

 また、晴海の選手村跡地では、パイプラインを通じての水素の街区供給を本格的にやっていきます。
 水素の活用は、東京のエネルギー危機と気候危機の両方に対応するファクターになります。東京もそこを実装していきたいと考えています。

 

-- SDGsの達成を担う中心となっていくのは子どもたち。世界の子どもたちが集い、2030年の未来の平和で豊かな世界について考える「こども未来国連会議」(一般財団法人ピースコミュニケーション財団)についても国連から認定を受ける手続きが進んでいます。

 今年、インドネシアのジャカルタで「U20(Urban20)メイヤーズ・サミット」が開かれて、参加してきました。なかでもSDGsは底流となっていました。
 都としても50年、100年先を見据えたまちづくりとして、「東京ベイeSGプロジェクト」を進めています。そのなかのトップランナーヒアリングで、いろんな方からお話を聞いています。なかには子どもの権利のために活動した子どもに贈られる「国際子ども平和賞」を日本人として初めて受賞された川﨑レナさんもいらっしゃいました。

 子どもと未来を組み合わせて、SDGsをテーマにしていくのは意義があります。「こども未来国連会議」は子どもと未来と両方兼ね備え、どちらも今後一番中心に考えていかなければならないと思います。子どもは社会の宝であり、将来の担い手。子どもたちに未来を語ってもらう、自分の未来への夢、希望を持ってもらうことで、子どもたちが自ら考えて持続可能な未来を切り拓いていくことに期待しています。

-- 今年も残すところあと少しとなりました。2023年に控えていることを教えてください。

 先ほど米粉パンの話をしました。お米つながりじゃないですが、都は“SusHi Tech Tokyo(スシテックトーキョー)”というコンセプトを掲げています。 “SusHi(スシ)”といってもお寿司ではなくて、持続可能な社会の実現に向けて、東京の高度な技術力を世界に発信する“Sustainable High City Tech Tokyo”の頭文字をとったものです。来年の2月にスタートアップ支援、また、都市の連携を深めていくイベントを開催していきます。未来をにぎる、という形で世界の方々にも声をかけています。「SusHi Tech Tokyoをやります」と言うと、がぜん喜んでいただけますね。

-- 興味をそそるネーミングですね。どんなイベントになるのか楽しみにしています。

(聞き手・一木広治/構成・酒井紫野)

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