全日本13連覇の江畑秀範が明かすテコンドー選手を取り巻く状況。遠征費が捻出できず世界選手権出場を断念
「国からの助成金が少ない。選手たちが壁を破るしかない」
「実力があっても世界選手権に出られないという選手が今後出てくるのでは?」との問いには「今後出てくるかなと思う。僕自身は30歳で今は普通に給料をもらいながらやっていて、いきなり試合で何十万も持ち出しになると貯蓄を全部なくすか借りるしかない。東京五輪までずっと借りてきた。“もうこれ以上は”とあきらめた。今回行っている選手はスポンサーがいるか裕福な家庭かのどちらか。でも仕方がない。テコンドー自体がいまだにオリンピックで岡本(依子)さん以外メダルを取れていないので国からの助成金が少ない。選手たちが壁を破るしかない」などと語った。
そして「自分は今、多額の借金がある。これは同情してほしいとかではない。こういう選手はいっぱいいる。でも自分は特別かも。人から借りずに銀行とかカードで借りていたので、それを返済している途中。アジア内とヨーロッパでは全然違うが一番遠いヨーロッパで1試合で30万円くらいかかる。コーチも連れて行ったら1.5倍かかる。セコンドがいないと試合ができないので。でもテコンドーが強くなって地上波に出るようになったらスポンサーはつくと思う。今は結果を出していないから仕方ないかなと思う」などと自身の状況を例に挙げ、テコンドー界の現状を説明した。
江畑は2020年にRIZINに出場したのだが「初めてキックボクシングルールで試合をして判定負けしたが、僕の中ではコロナ禍で自分より強いテコンドー選手が日本にいなくて、海外にもいけなくてモチベーションが下がっていたので、自分より強い相手とやりたくてRIZINに出た」とその理由を明かす。そして今回の出場については「世界選手権にお金がなくて出られなかった。それでモチベーションが上がらなくて。今回連絡をもらった時に、また自分より強い選手と対峙できて、その圧力を感じられるんだなという、アスリートとしてというか武道家としての刺激を感じて承諾した。初めてのルールなので練習もしたことない、寝技もしたことないし、OFGもやったことがない。全部初めてで4~5日前に言われたが、強い人と対峙できることが幸せだと思って承諾した」などと語った。