今どきの「こじれ世代」性依存系女子は都会で幸せになれるのか? 内田理央主演『来世ではちゃんとします3』第1話〈ドラマでしゃべりたい〉

イラストと文・ミクニシオリ

  内田理央主演のドラマ『来世ではちゃんとします3』(テレビ東京、毎週水曜深夜0時30分)の放送がスタート。いつまちゃんによる同名の人気漫画が原作のドラマも、話題が話題を呼びシーズン3に突入した。

 内田演じる主人公の大森桃江は、デザイン会社で働く普通のOL……と見せかけた、セフレ5人持ちの”性依存系女子”。主人公を中心に、デザイン会社で働く仲間や、主人公のセフレたちの「性から来るこじれ」にスポットライトを当て、性の多様性をポップに描いたことで話題を集めてきた。シーズン3は、桃江が性依存からの脱却を目指すべく性行為断ちするシーンから始まる。登場人物たちが性に対するコンプレックスや歪みを垣間見せるシーンも多く、彼らが「いかにしてこじれたか」が細かく描写されることも本作の見どころ。赤裸々なのに、どこか優しくて哀しい令和のラブコメディをレビューしていく。桃江たちはこれから、東京で幸せに暮らしていくことができるのだろうか。

日々のストレスを性で解消してきた若者は、性依存から脱却できるか?

 1回30分、2話編成で構成されることが多く、テンポのいい展開でどのシーズン、どの話から見始めても楽しめるのも魅力の本作。各話で様々な登場人物の性における多様性やコンプレックスが開示されていくが、第1話は主人公の桃江と、桃江の職場の同僚である松田健(小関裕太)にスポットが当たった。

 2人はこれまで、タイプの違う性依存に苦しんできた。2人とも、性行為の経験は多くともまっとうな恋愛経験は多くない。桃江の場合は、性交渉に発展すると相手に対して好意をいだきやすい。しかし相手から本気の好意が返ってくることはなく、性行為でジャンキーに承認欲求を満たしながらも、誰かに本気で愛されるという経験の乏しさから、結果的に自己肯定感を下げてしまう矛盾に苦しんでいた。

 一方、松田くんは、これまで「誰かを本気で好きになる」という経験があまりなかった。ルックスの良さを理由に女性に言い寄られることは多くとも、彼自身が本気になれないことで、結果的に女性から怒りを買うこともしばしば。ファストな性行為で一瞬満たされても、関心が続かないことで女性を傷つけることに罪悪感を持っていた。

 そんな2人がお互い別の理由でセフレ断ちを決意し、シーズン2で急接近。交際を始めるも、これまでの性行為のトラウマから「性行為なしの交際」を約束する。第1話はその約束から3カ月以上が経過し、未だ触れ合うことをガマンしている2人の様子から始まる。2人はこのまま、性依存から脱却できるのだろうか?

 

主人公の新しいフェーズに喜びの声も。幸せになってほしい

 とはいえ、前シーズンでは「誰かから愛されたい!」と号泣していた桃江。その頃から考えれば、職場で本命彼氏ができたことは彼女にとって大きなステップだ。1話では、桃江が身近な環境に彼氏が存在する喜びを噛みしめるシーンも。SNSでは、一般的なラブコメドラマのような展開に「安心した」という声も上がっていた。

 しかし2人はまだ、緩すぎた異性関係の副作用に苦しんでもいる。性行為をしたら、また前のような失敗を繰り返してしまうのではないかという怯えから、なかなか関係を進展させられない。それでも、過去のセフレたちから連絡が来ると、気軽だった頃の思い出が蘇る。忙しい2人にとっては、性行為はエナジードリンクのような効果を持っていたのかもしれない。日常的にパートナーに気を使い合う時間と余裕が、ブラック気味に働くビジネスパーソンである彼女たちにはない。だから、気兼ねなく責任もないセフレ関係に甘んじてしまっていたのだ。1話では桃江と同僚が「今年もお正月休みなかったね……なんか、毎年同じことを繰り返しているよね」とため息をつくようなシーンも。

 物語の舞台となるデザイン会社・スタジオデルタのブラックさはかなりリアルで、だからこそプライベートの人間関係が希薄でジャンクになっていく様子も、都会で働く若者から見ると共感性が高い。今や、職場や学校で恋愛する人と同じくらい、マッチングアプリなどで知り合いではなかった人と恋愛する人もいる時代。普通の恋愛を知らないまま性の価値観や恋愛観が歪んでしまう若者も増えているため、登場人物の誰かしらに共感を持ってしまうのも、本作に引き込まれていく理由の1つだ。だからこそシーズン3で始まった、桃江と松田くんのピュアなようでピュアではない、若干いびつな恋愛関係に注目が集まっている。

 

ピュアな恋愛シーンに紛れた過激シーンでひと笑い

 第1話では結局、ボディタッチ的な進展がなく終わってしまった2人。最後は松田くんに、元カノからのメッセージも舞い込んできて、今後また波乱が起こりそう。2人の幸せを願う平和主義な視聴者にとっては、ハラハラする展開が予想される。しかし、性に頼って生きてきた男女が性関係なしでどう人生を充実させていくのかが、シーズン3の最たるテーマであると想像できる。2人は誘惑に打ち勝って、自分を犠牲にしないで済む恋愛関係を作っていけるのだろうか。

 シーズン3は桃江たちが奔放な性生活を改善していく意思を持ったタイミングからのスタートとなったが、回想シーンではこれまで通りの「過激シーン」も。桃江のセフレたちにはそれぞれの性癖があり、10人いれば10通りある性的指向の多様性にも触れてきた同作。今回も、桃江の回想でクセの強いお色気シーンは健在だった。

 特に、シーズン2で実質お別れを告げたはずのAくん(塩野瑛久)との回想は、今回もかなり衝撃的だった。ハイスペイケメン商社マンのAくんは、厳しい家庭で親の期待に答え続けたことで性的嗜好をこじらせてしまっている。しかしお別れしてもなお、夢に見るほどの好意をAくんに持つ桃江。桃江がAくんのことを忘れない限り、松田くんとのピュアな恋が続いても、ハードな性癖に答える桃江のいじらしさを感じる回想も続きそうだ……。

 

魅力的な登場人物の今後にも注目

 桃江の働くデザイン会社は曲者揃い。無性愛者の高杉梅(太田莉菜)、処女厨でセカンド童貞の林勝(後藤剛範)、風俗嬢に恋する檜山トヲル(ラバーガール・飛永翼)……彼らもまた忙しい日々の中で、自分らしい幸せ、自分らしい恋愛との向き合い方を模索している最中だ。主人公とはまた違う、性の悩みを抱える登場人物たち。あなたは、誰に一番共感するだろう?ドラマを見ながら、今どきの若者の多様性、自分とは違う価値観にも触れていける良作ドラマ『来世ではちゃんとします3』。今週から毎話レビューしていく。

 次回更新もお楽しみに!

1992年、茨城県生まれ。フリーライター・恋愛コラムニスト。ファッション誌編集に携わったのち、2017年からライター・編集として独立。エンタメ・恋愛・ライフスタイルを中心に執筆活動を行う。インタビューや匿名取材、街頭取材経験も多いノンフィクション系ライター。若者恋愛トレンド評論家としてネットTV・地上波バラエティなどに複数回出演。