整形女子と都合のいい女の苦悩…内田理央主演『来世ではちゃんとします3』第3話〈ドラマでしゃべりたい〉

イラスト・ミクニシオリ

 内田理央主演のドラマ『来世ではちゃんとします3』(テレビ東京、毎週水曜0時30分)。18日に放送された第3話では、ソープ嬢に恋する兼業漫画家・檜山くんのアシスタントである整形女子の蜜柑ちゃんが登場。「美しさとはなにか」を考えさせられるとともに、後半では主人公の桃江(内田理央)が、過去のセフレたちを精算すべく大奮闘。色々な人がいる都会で、自分らしくあろうと頑張る女性たちの姿に胸打たれた。

「美しさ」ってなんだろう?

 

  前半では、お気に入りのソープ嬢・心ちゃんのためにスタジオデルタでの本業の傍ら漫画家としても働く檜山くん(ラバーガール・ 飛永翼)と、そのアシスタントのコスプレイヤー女子・蜜柑ちゃん(岬あかり)が登場。

 心ちゃんがソープを連続欠勤しているのを見て、不安そうにLINEで高額のお布施を送金してしまう檜山くん。それでも心ちゃんから返信はなく、寂しそうに肩を落とす。そしてアシスタントの蜜柑ちゃんは、檜山くんが密かにソープ嬢に想いを寄せていることに気づいていた。

 蜜柑ちゃんは檜山くんに恋愛感情があるわけではないが、コスプレイヤーとして男性ファンを抱えていることもあり、小さな自己承認欲求を檜山くんに向けている。決してかっこよくはない檜山くんだけど、自分とは釣り合わないと分かっていてもカワイイ女の子が好きで、蜜柑ちゃんのことはまさに「アウトオブ眼中」と言ったところなのだ。

 承認欲求のコントロールは難しい。蜜柑ちゃんは檜山くんに好意を持っていないので、恋愛的に好意を持っているかどうかに関わらず、自分を認めてほしいと思ってしまうことが分かる。

 美容整形で小さなアップデートを重ねてきた蜜柑ちゃんだけど、それでもまだ他人の美しさと自分を比較してしまう。「非イケメン」であるはずの檜山くんも、ナチュラル美女の心ちゃんにはご乱心なのに、可愛くなったはずの自分のことを性的に見ないことにどこか納得がいかない様子だ。

 美容整形はここ数年でポジティブな認知が広がり、若者の間では「人生を前向きに楽しむための1つの手段」として捉えられている。コンプレックスがなくなって人生を楽しめるなら素敵だけれど、整形を重ねても自分を認められず、醜形恐怖症などの心の病にかかってしまう人もいる。

「美しさ」とは、誰が決めるものでもない。本来、自分が美しいと思えればそれでいいはずなのだが、ルッキズムにあふれた社会の中では、悪意なく他人から美しさをジャッジされることもある。面食いの檜山くんが蜜柑ちゃんに興味を示さないことも、蜜柑ちゃんからするとジャッジされていることになるのかもしれない。

 美しさを人と比べるなといっても、今の社会では難しいことかもしれない。でも美の基準が自分の中にないと、流行りの芸能人や流行の顔によって、自分を変えていくことになってしまうかもしれない。蜜柑ちゃんの今後が心配だ……。

「都合のいい女」の苦悩

 

 後半では、相変わらずスタジオデルタの同期・松田くん(小関裕太)とイイカンジの桃江が、シーズン2まで引きずってきたセフレたちを全員精算することを決意した。「彼氏ができたから、もう会えない」と送ると、セフレたちからは様々な反応が。寂しがる人、軽い返事で終わらせる人……。中でも、シーズン2で同棲までしたEくん(おばたのお兄さん)からは意外な反応が。

 家まで押しかけてきて「浮気してごめん。お前がいなきゃだめなんだ」と迫るEくんに、桃江がこれまでにないほどの怒りを見せる。元恋人という関係はグレーで、その分都合よく戻ったり離れたりもしやすい。失ったものほどもったいなく感じるのは、人間として当たり前の心理だ。でも、都合よく済ませてしまってきた関係の相手は、その楽さに慣れてしまっている。だからこそ、また都合よく扱われるかもしれない……そんな不安が桃江の胸にもあるはずなのだ。

 その状況を、彼氏である松田くんに偽りなく話す桃江。松田くんは冷静だったけど、人によってはかなり怒られてもおかしくない。その話を聞いて、彼自身も引きずっていた元カノを精算すべきか悩んでしまう。そんな彼に、桃江は「きちんとその子に会って、その上で私たちがどうするか決めて」と言い放つ。

 昔の異性を引きずっているなんて、現実でもよくあるシチュエーション。だけど、元恋人に会って考えておいで、なんて普通は言えない。だって、今自分が好きだと思っている人が、自分以外の要因で自分から離れていくかもしれないのだから。

 心に残ったわだかまりは、そのままにしておけば消えるとは限らない。1年、2年と時を過ごした後に心変わりされるくらいなら、今すぐ精算してもらった方が時間的にも、心的にもダメージは少なくて済む。

 それでも付き合いたての絶頂の時期には、なかなか言い出せることではない。桃江の人間的な成長を感じることができた回だった。今まで都合よく扱われていた相手に「ナメるな

」と言い放ち、やっとできた健全な恋ともまっとうに立ち向かおうとしている。松田くんの心が、今後どう動くのかが気になる。

(文・ミクニシオリ)

1992年、茨城県生まれ。フリーライター・恋愛コラムニスト。ファッション誌編集に携わったのち、2017年からライター・編集として独立。エンタメ・恋愛・ライフスタイルを中心に執筆活動を行う。インタビューや匿名取材、街頭取材経験も多いノンフィクション系ライター。若者恋愛トレンド評論家としてネットTV・地上波バラエティなどに複数回出演。