弱さを理解できる「性依存系女子」か、ポジティブになれる「自己肯定系女子」か? 内田理央主演『来世ではちゃんとします3』第4話〈ドラマでしゃべりたい〉
内田理央主演のドラマ『来世ではちゃんとします3』(テレビ東京、毎週水曜0時30分)。1月25日に放送された第4話では、主人公の桃江(内田理央)がトランスジェンダーの凪(ゆうたろう)とラブホ女子会に。後半は凪の姉でレズビアンの聖羅(ルウト)、松田くんの元カノ・華ちゃん(筧美和子)が登場。優柔不断でなかなか幸せを掴めない桃江とは裏腹に、どんな環境でも自分の意見をしっかり持つ、強い女性たちも登場。その違いはどう描かれていくのだろう。
悩みや弱さを人と分かち合う、マイノリティなふたり
桃江と凪のラブホ女子会シーンから始まった第4話。ウキウキでラブホ女子会に向かう2人だけど、受付女性は「ラブホ女子会コース」を予約する凪の顔を見て、一瞬固まってしまう。そんな対応にも慣れている様子の凪だけど……やっぱり、傷ついていることも確かなのだ。「未だに男性2人じゃ入れないラブホもある」と凪。
考えてみれば、同性同士でラブホテルに入れないのって、なんでなんだろう。インターネットで調べると「犯罪を防ぐため」「掃除に時間がかかるらしい」などという不明瞭な理由が出てくる。もちろんホテル側にも事情があるのだろうけど、同性愛者への偏見の目線がある現状も否めない。今は「同性OK」と明記しているホテルも増えているようだけど……。
至るところで自分に向けられてきた不利な目線に不安がる凪。「将来も自分を殺して普通に男として社会人になっていかなきゃいけないのかな」「僕がもし普通の女の子だったら今までの男性を全員メロメロにできるのにな」。マイノリティであることで、色々と生きづらさを抱えてきている凪。しかし桃江もまた、手に入らないものばかり欲しくなって、性的マイノリティとはまた違う生きづらさを抱えてきた。
「私たちって似てるよね」と、固く手を握り合う2人。お互い絶対幸せになろうね、と誓い合う2人を見ていると、生きづらさや悩みを抱える人に必要なのはお互いに共感しあえる友人なのではないかとも感じる。2人の悩みは同じではないけれど、悩んでいるのは自分だけではないという安心感は大切だ。1人きりで悩み続けるよりは、きっと心強い。
一方…自己肯定感高く、強く生きる女性たち
その一方で、今回「来世ちゃん」では珍しい強い女性たちも登場した。桃江の彼氏・松田くんは、凪ちゃんの想い人・林くんちに連泊中。元カノへのモヤモヤが晴れず、気を紛らわすかのように友人宅へ転がり込んでいる松田くんだったけど、とうとう「元カノ精算」の決意をする。
松田くんの元カノ・華ちゃんは、派手ではないけど自己肯定感の高い女性。ピアニストとしての目標が高く、単身海外で活動している華ちゃんちゃん。松田くんとのデートに遅刻してきて「いい女って遅れてくるものでしょ?」とバッサリ言える自己肯定感の高さ。ドラマでは耳にするこのセリフだけど、異性に向かって堂々と言える女性はなかなかいない。だからこそ華ちゃんは、松田くんの心にも残っているのだろう。
華ちゃんと話す松田くんの心中は、ぶっちゃけ未練たらたら。そんな松田くんに「一緒にフランスに行こうよ!」と誘う華ちゃん。忙しい日常を忘れるべく、女性とは都合のいい関係を作ることで自分の心を守ってきた松田くん。フランスで働いたらどんな感じかな、と想像する彼だけど……。
日本より働きやすい海外で、個人事業主として働く想像をするも、あまりピンとこない様子。向上心のある人に憧れはするけれども、自分はより想像のつきやすい、日常生活に満足してしまうその気持ち、すごく分かる。華ちゃんのことも憧れの目線は持っているようだけど、どこかで「自分とは違うすごい人」という一線を引いているのかもしれない。だって、肯定感の強い人と一緒にいるには、自分も肯定感を高く持っていないといけない。そうではないと、劣等感で押しつぶされそうになるからだ。
そんな松田くんに「今の彼女はあなたにとって、将来を共にするパートナーなの?」と持ちかける華ちゃん。なんでもないような顔をしても意外と食い下がってくるあたり、スタジオデルタメンバーにはない意思の強さを感じる。もちろん、桃江とは真逆と言ってもいい行動力と安定した情緒を感じる。
華ちゃんだってきっと、自分の好きなことを仕事にするために頑張っていて、その夢を叶えるために強くなった部分もあるはず。そう思うと憧れる気持ちも分かるけど、果たして松田くんの決断は……?
3話の最後には凪の姉・聖羅さんも登場。聖羅さんはなんと、桃江とはレズビアンバーで出会ってワンナイトラブしたこともある。……つまり、聖羅さんはレズビアンなのだ。
通勤時間にオフィスカジュアルの服装で、颯爽と現れた聖羅さん。凪と似た境遇ではありながらも、社会に順応して生活していることが伺える。しかも、彼氏がいる桃江に対しても「それってつまり、女枠は空いてる?」と強気の姿勢だ。凪と同じ性的マイノリティではありながらも、自身のキャラクターを上手にコントロールしている聖羅さん。聖羅さんの強さの理由はまだ描かれていないが、凪と同じような悩みを抱えたこともあるはずだ。聖羅さんはなぜ、強く生きることができているのか……今後、聖羅さんの生き様がどう描かれるのかも注目ポイントだ。
来世ちゃんの見どころはやっぱり、どの登場人物についてもその人がなぜ悩み、どんな人生を送ってきたのかを、コミカルながらにしっかり描いてくれるところだ。新しくスポットがあたった登場人物たちの人生も気になるが、松田くんと桃江はどんな選択をしていくのか……来週が待ちきれない。
(文・ミクニシオリ)