すべては、こども達の未来のために【長島昭久のリアリズム】

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 令和5年が明け、第211回国会が召集されました。
 今国会の最大のテーマは、防衛力の抜本的強化と“異次元の少子化対策”(岸田首相)です。

 人口は、経済力や軍事力と並んで「国力」を示す大事な要素です。

 昨年末に、衝撃的な数字が発表されました。
 予測より8年も早く出生数が80万人を割り込むことが確定したのです。
 我が国の人口は2011年から毎年減り続け、令和3年の減少数は60万人を突破しました。

 とりわけ国の活力を示す生産年齢人口(15‐64歳)の減少は1995年以来減少し続けており、我が国は遠からず衰亡の危機に直面することになるでしょう。その意味で、岸田首相が少子化対策を政権の最優先課題に据えたことは時宜に叶っています。この4月には、こども政策の司令塔である「こども家庭庁」も発足します。

幻に終わった「第3次ベビー・ブーム」

 しかし、もはや手遅れではないかという厳しい批判もあります。すなわち、終戦直後の1947‐49年に生まれた「団塊の世代」は年間270万人超に上り(第一次ベビー・ブーム)、その子供たちの「団塊ジュニア」(1971‐74年生まれ)は年間出生数200万人超に達しました(第二次ベビー・ブーム)が、その子供世代が生まれた1995年頃には顕著な出生数の増加は見られませんでした。「第三次ベビー・ブーム」は幻に終わってしまったのです。

 この頃から、「少子化」が意識され始めましたが、当時はもっぱら「少子高齢化」と呼ばれ、2000年に介護保険制度がスタートするなど、政治は先に波が来る高齢化への対策に全力を挙げることになりました。その成果として、高齢者福祉政策は北欧諸国と比べても遜色ないレベルを実現することになりましたが、一方の「こども子育て・現役世代」支援は予算規模で高齢者関係費の1/10足らずにとどまってしまいました

もはや少子化による人口減少を反転させることは困難

 しかし、少子化による人口減少を反転させることは容易ではありません。そこで、政府は、女性が一生で産む子供の数を示す合計特殊出生率(昨年は1.33でした)に代わって、「希望出生率」(子どもを望む夫婦の希望がすべて適った場合の出生率)1.8を数値目標として掲げました。その上で、その希望を阻む様々な障害を一つ一つ除去することに全力を挙げる現実的な方針を立てたのです。ここで重要なことは、政策によって人口減少を反転させることは極めて困難であるとの認識に立ったということです。

ならば、人口減少を前提とした「こども政策」とは何か?

 すなわち、人口減少を所与のものとして、第一は、子供を希望する家庭への支援を最大限行うこと。第二は、人口減少をカバーする、無人化(ロボットの活用)や省人化(DXの推進)、海外人材の獲得など代替手段を追求し、人口減少社会を持続可能なものにしていこうとしています。

 私が安全保障と共に重点政策の柱に据える「こどもの未来保障」は、もっぱら第一の少子化対策に関わる課題解決につながる施策展開です。

 こども子育てをめぐる社会課題は多岐にわたります。妊娠から出産、育児、就学前の幼児教育、さらには初等中等教育、高等教育など、ライフステージに従って、問題も複雑化します。私も、これまで、待機児童の解消や、こどもの貧困や虐待問題、不登校やいじめなどに取り組んできました。そのことを通じて、次のような結論にたどりつきました。

将来を決定する妊娠から2歳児までの3年間

“三つ子の魂百まで”という諺がありますが、小中学校における課題の大半は、就学前の育つ環境によって深刻な影響を受けるということが認識されるようになってきました。とりわけ、0‐2歳児の環境が決定的だというのが、名著『幼児教育の経済学』で有名なヘックマン博士の結論です。政策的には、母親の妊娠から2歳児までの3年間をどう支援するかで、その後のこどもや子育て家庭の状況が方向づけられるというのです。換言すると、その“決定的な3年間”に適時適切な支援を各家庭に提供できれば、発達障害(最近は子どもだけでなく、親も!)や、虐待、貧困、(外国人の親による)コミュニケーション不全、不登校などを未然に防ぐことができると考えます。

だから、日本にも「ネウボラ」が必要だ

 その意味で、私がかねてから提唱してきたフィンランド発祥の「ネウボラ」という仕組みは優れていると思います。妊娠から就学前までの7年間を定期的な健康診断という“機会”を通じて“かかりつけの保健師さん”が責任をもって子育て家庭“丸ごと”ケアする(リスクを早期に発見し、必要な専門的支援につなげる) “無償”の制度です。我が国にも同様の仕組みを導入している自治体は少なくないのですが、十分な研修や訓練を受けた専門の保健師や保育士の数が圧倒的に足りず、中途半端な状況にとどまっています。我が国には、子供関連の意欲的なNPOも育ってきていますし、まだまだ地域コミュニティの力も捨てたものではないし、予算と中核人材の確保ができれば、本場フィンランド以上の成果を挙げる仕組みを構築することができると確信します。日本にも真のネウボラを実現するべく全力を尽くします。

 こども家庭庁発足の今年こそ、「こどもの未来保障」元年として、子供を望むすべての家庭が希望を失うことのないような環境をつくり上げることを目指し、政府与党に一因として、政策実現に粉骨砕身頑張ってまいります。

【長島昭久プロフィル】
自由民主党 衆議院議員7期・東京18区(武蔵野市・府中市・小金井市)。
1962年生まれ。慶應義塾大学で修士号(憲法学)、米ジョンズ・ホプキンス大学SAISで修士号(国際関係論)取得。2003年に衆院選初当選。これまで防衛大臣政務官、総理大臣補佐官、防衛副大臣を歴任。2019年6月に自由民主党に入党。
日本スポーツ協会理事、日本スケート連盟会長。