都医師会、新型コロナ「5類」移行を前に改めて「ワクチン接種」の効果・意義を解説

「mRNAワクチン接種により若年男性では心筋炎発症率が一定程度増える」と新井理事

 また、接種による自己への免疫反応(攻撃)について「ワクチン成分が局所のリンパ節の食細胞に取り込まれ、樹状細胞の表面にワクチン抗原が提示される。この樹状細胞がT細胞を刺激して抗体が作られるんですけど、樹状細胞は3~5日と比較的短期間で消えてしまうので自己に対する攻撃が起きることは通常はない」としながらも「ただし、若年男性へのmRNAワクチン接種後の心筋炎を調べてみると、心筋内にT細胞の浸潤が見られるのでこれが影響しているかもしれないという疑問点がある」。

 続けて心筋炎発症率について「1940年代~2021年までの4700の論文から22の論文を抽出したメタ解析で、新型コロナワクチンによる心筋炎発症率は100万回接種で18・2、コロナ以外のワクチンで56・0と決して新型コロナワクチンが高いわけではない。また、mRNAワクチンは100万回接種で22・6と、非mRNAワクチンの7・9より少し高い。mRNAワクチンによる心筋炎発症率を男性、女性、年代で比較すると30代未満の男性が約10倍と多い」とデータを示し「ここから総合的に言えることは、mRNAワクチン接種により若年男性では心筋炎発症率が一定程度増えますが、新型コロナワクチンの心筋炎発症率は他のワクチンよりは高くない」と結論づけた。

 その後もコロナ感染での心筋炎リスクが18・28パーセントに対しワクチン後の心筋炎リスクは2・7パーセント、通常のウイルス性心筋炎の180日以内致死率は11・0パーセントに対しワクチン後の致死率は1パーセント、米CDCが3万5000人の妊婦を調べたデータでは流産率・早産率・奇形発症率・低体重出生率に有意な影響は見られていないこと、妊娠中のコロナ感染の健康リスクなどを次々示した。

 新井理事は「ワクチンは個人の感染予防、個人の重症化予防、社会全体の防衛に効果があるが、一方でワクチンによって起きるリスクも存在する。ワクチンによる利益とリスクを比較して考えることが重要だ。自然感染したほうがいいのではないかという声もあるが、合併症をどうするのか? 後遺症をどうするのか? 周りの人に広げるリスクをどう考えるかを総合的に判断すると、ワクチン接種の重要性が分かるかと思う」と訴えた。