橘ケンチが“ガチ”の日本酒本を発売「一家に一冊置いてもらって」
日本酒ができるまで、正しい保存法といった日本酒の基礎知識、橘と蔵元の対談なども掲載されているが、大部分は日本酒の瓶がずらりと並んだページだ。「橘ケンチ激選!いま飲むべき日本酒500」として、500を超える銘柄を橘自らテイスティングし紹介している。
「圧倒的な情報量にしたいですねと打合せの段階で話していたんです。過去にも素晴らしい日本酒の本がたくさんありますが、それらを読み直す中で、自分が頑張ればある程度の壁は超えられるなと思いました。とりあえず銘柄を増やして一番銘柄数が多い日本酒を紹介する本を作りませんか、と。それで500銘柄にして最終的には少し超えたんです。最初は800あったんですけどね(笑)」
500の銘柄は、これまでに橘が巡った酒蔵が作る酒、自身が好きなもの、さらに日本酒では一目置かれるIMADEYAと住吉酒販の協力を仰いで酒のプロが「今一番いいと思っているもの」を集め、厳選した。橘は3日間をかけてすべてテイスティングし、それぞれ原料米、精米歩合、酵母、日本酒度、酸度といったデータ類、特徴、甘さや酸味といったバランスの表、そして橘のコメントを添えて並べている。
「1日13~14時間かけて3日間。1日目はフレンチの名店『銀座レカン』のシェフソムリエの近藤佑哉さんに来ていただいて、近藤さんと僕、IMADEYAのスタッフさんの3 人で20本ぐらい同時にテイスティングして、これは何点とかこういう味がするって意見を出し合ってそれぞれの意見を真ん中で調整するみたいな作業をしたんです。この作業が良かった。一般的な感覚でやりたいというのがあったので、それを自分ひとりでやったとしたら自分個人の感覚でしかなくなってしまうんで」
3日間のテイスティングはさながら修行のようにも感じる。
「やっていくと、だんだん自分の舌と感覚が研ぎ澄まされてくるのが分かるんです。だから一番大変だったのが1日目で。150本だったのかな、これはしんどいと思ったんですよ。それが2日目になるとさらに上がって、3日目はもう少し上がっていく。……達成感もありつつも、最後には次があるならもっといけるかもなんて話してました(笑)」
“修行”を経て日本酒の味わい方にも変化が。「このお酒の酸味はテイスティングノートで言うとどうだろう? こっちはあの評価軸では何ポイントだ、とか。すごく意識しながら飲むようになっています。こういう飲み方も楽しいですよ、僕的にはね(笑)」