本当に“本当にヤバい”ドイツ発のトイレスリラー映画『ホーリー・トイレット』を、観た!【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】

こんにちは、黒田勇樹です。

 三栄町LIVE×黒田勇樹プロデュースvol.13「シン・デレラ」が昨日(2月21日)からスタートしました。今回は妻を主演に、そして子連れ稽古などいろいろなことに取り組ませていただいたんですが、本番がしっかりできなければ何を言ってもダメな世界ですのでしっかりやり切ります。

 毎度、恐縮ですが、興味のある方はぜひ。

 では今週も始めましょう。

『ホーリー・トイレット』3月3日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開 配給:アルバトロス・フィルム © 2021 NEOPOL FILM, KELLNER & ZAPF GBR ©Daniel_Dornhoefer

 シチュエーションスリラーと呼ばれる「限定的な環境での危機的状況」を描く映画のジャンルの一つ。
『ソウ』シリーズ以降、急激に流行ったこのジャンル、「鮫映画」とか「ゾンビ映画」の様に「流行りすぎて、やりつくされちゃった」感があったんですが、素直に「コレ系で一番好き」と、言える作品に出会ってしまいました。
シチュエーションスリラーって、鮫とかゾンビと違って「とんでもない設定だと、なんでもアリになっちゃって冷める」特性があるんですよね。“宇宙人ならテレパシー使えばいいじゃん”みたいな。だから、どうしても“現実的で誰もが経験したことのある状況”が、必要。

 今回の舞台は何と「建設現場の仮設トイレ」、状況は「突き出した鉄筋に腕が突き刺さっちゃって身動きが取れない」。
 臭い!痛い!汚い!狭い!
 筆者を始め、多くの人が嫌悪感を抱くであろう要素のフルコース。
 普段は、飲食店でトイレのドアが目に入る席も避けるぐらい潔癖なのですが、このトイレからは目が離せませんでした。

 登場人物は、ほとんど1人。片手しか使えない状況で、トイレの中にある「そんなに、都合よく色々あるんかい!」と、突っ込みたくなるような様々なアイテムを、脱出ゲームの様に駆使して、状況の打破を試みるんですが、これがずーっと飽きずに見れるし、アイテムたちも、主人公が建築士だったり、出てくる度に根拠がしっかりしているので、都合はいいけど気にせず観続けることができる。
 ドイツの“ジャンレノ”か“渡辺謙”か、という渋い俳優、トーマス・ニーハウスさんが、これでもかと危機的状況を演じていく珠玉の90分。
 原題が『holy shit!』、日本語でいう「クソが!」みたいな“本当にヤバい”時に使うスラングなのもオシャレですよね。

 特に、設定で感心したのが、悪役にあたる人物が「市長になりたい悪い人」だったこと。
 建築現場の着工式でずっと、演説してるんですよね。声と、相手の意見だけが一方的に聞こえ続ける。閉じ込められている人間に、これほど辛いシチュエーションがあるでしょうか?
 更に、その演説が「ドイツ語」だということも味噌。

 ドイツ語の演説って、なんであんなに魅力的なんでしょうね!
 字幕で観たのですが、心と耳は、もうビッテ!ダンケ!って感じでした。
 これ系好きな人は何十年も語られる傑作だと思うので、是非今のうちにツバをつけておくことをお勧めします。

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黒田勇樹(くろだ・ゆうき)
1982年、東京都生まれ。幼少時より俳優として舞台やドラマ、映画、CMなどで活躍。
主な出演ドラマ作品に『人間・失格 たとえば僕が死んだら』『セカンド・チャンス』(ともにTBS)、『ひとつ屋根の下2』(フジテレビ)など。山田洋次監督映画『学校III』にて日本アカデミー賞新人男優賞やキネマ旬報新人男優賞などを受賞。2010年5月をもって俳優業を引退し、「ハイパーメディアフリーター」と名乗り、ネットを中心に活動を始めるが2014年に「俳優復帰」を宣言し、小劇場を中心に精力的に活動を再開。
2016年に監督映画「恐怖!セミ男」がゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて上映。
現在は、映画やドラマ監督、舞台の脚本演出など幅広く活動中。

公式サイト:黒田運送(株)
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