早乙女太一と倉科カナらの2023年版『蜘蛛巣城』開幕!「どこが一番幸せだったんだろうって考えて」


 黒澤明監督の傑作映画『蜘蛛巣城』を舞台化する、KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『蜘蛛巣城』が25日開幕した。

 そのプレスコールが23日、横浜市のKAAT神奈川芸術劇場で行われ、早乙女太一と倉科カナ、長塚圭史、演出の赤堀雅秋が取材に対応し、本作の見どころや、自身の意気込みを語った。

 早乙女は久しぶりの舞台。本作に臨むにあたって滝行に行ったそうで、「森にも行きたかったし、そういう環境に行ってみようと。普段はあまりそういうことはしないんですけど、年の始まりでもあるし、久しぶりの舞台ですし、少し意気込んでいってみようと思いました」と気合を入れて稽古場に入ったよう。「稽古が始まった日から大分強火で煮込んできた感じがあります。この時代に生きている人間のエネルギーとその人間たちの繊細な部分をしっかり稽古場で皆さんと一緒に作り上げてこられたと思います。このまま本番に向けていけたら」と、胸を張った。

 倉科も「稽古初日からチームが一丸となっている感じがあって、そのまま劇場に入って皆さんに早くお届けしたいと気合が入っております」と笑顔を見せた。


 シェイクスピアの四大悲劇のひとつ『マクベス』をベースに、黒澤明監督が日本の戦国時代に翻案した同名の映画が原作。22年前に齋藤雅文が戯曲化し中村吉右衛門で上演された作品を、2023年版として届ける。

 同劇場の芸術監督を務めながら出演もする長塚は、「この作品は鷲津武時とその妻・浅茅が自分たちの本分を忘れてしまって、自分たちが何者であるか、正体を忘れてしまって、より高みを目指してしまうということが大きなテーマ。何かを得るともっと欲しくなるという状態に陥る、それは人間誰しもが抱えているものだと思います。その人間の業みたいなものを、シェイクスピアの『マクベス』と、黒澤明監督の『蜘蛛巣城』、そして22年前に齋藤雅文さんが戯曲化した作品に貫かれていることだと思います。そういった作品を私たちの時代につないでいく意味でもこの作品を選びました」と、説明。

 

 マクベスにあたる鷲津武時を早乙女が、その妻の浅芽を倉科が演じる。赤堀は「今回に関しては、早乙女太一と倉科カナという若い夫婦で、いままでのキャスティングのイメージを払拭して、2023年のお客様の心に届く作品になれば」。

 特に好きなシーンはあるかと聞かれると、早乙女は「武時と浅芽のストーリーにはなっていますが、周りにいる人のストーリーも見えてくる作品。何気ないいろんな人物、いろんな立場の人たちがいて、あまり話さなくても、すごく奥行きがあります。何気ないシーンに惹かれる」

 倉科も「好きなシーンは本当にすべて」としたうえで、「武時と浅芽が頂点に行くとき、君主になっているときがあるんですが、それまでは武時は自分の欲望みたいなものをしっかり言わず、それを浅芽が表面化するんですけど、そのシーンは2人が一致して黒い煙が湧いている。そこから別々に墜落していくんですが……2人はどこが一番幸せだったんだろうと考えていただくのもいいかなと思います」

 長塚も「頂点を極めていくシーンは好きですね。後戻りできない感じ」と話した。

 2月25日~3月12日まで同所で。兵庫、大阪・枚方、山形でも公演がある。

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