共働き子育てしやすい街ランキング全国1位の豊島区が取り組む「都会の“小さな公園”活用」

 

 少子化の影響などを受け、子どもたちが遊具で遊ぶ姿を見ることが少なくなったといわれる昨今。都会の住宅街の中にある小さな公園を、子どもが遊べる環境を残しつつ多世代が参加する地域コミュニティ形成の場として生かそうとする豊島区の取り組みを取材した。

 豊島区南大塚二丁目児童遊園は、住宅地の中にある340平方メートルほどの小さな公園だ。都営住宅などの集合住宅に囲まれているが、保育園や区民施設に隣接していることもあり、日常的に子どもたちがブランコや砂場で遊ぶ姿を見ることができる。

 3月12日。この小さな公園に小さな子どもたちから高齢者まで幅広い世代が集い「防災訓練&グリーンマルシェ」・「井戸端かいぎ」が行われた。このイベントは、活用が十分でない公園を地域にひらき、地域とともにコミュニティの場に育てていくための取組みとして豊島区が実施する「中小規模公園活用プロジェクト」の一つ。この公園を拠点とする3つの町会、巣鴨・大塚でシェアオフィスなどを運営するRYOZAN PARK、この地域でカフェを運営するSLOW ecolabが企画し、豊島区と共に開催した。この地域で活動するガールスカウトや、公園に隣接する区民ひろば南大塚を運営するNPO法人おひさまひろばも協力した。

 この日は、実際の災害時を想定して、参加者が防災用かまどで火をおこし、野菜スープ作りや、災害時に配付されるアルファ化米の実食などを体験。

 公園内には防災用具や備蓄品を保管する防災倉庫があり、コロナ禍での中断はあったものの、近隣住民が参加する防災訓練を定期的に行ってきた。一方で、参加者の減少も課題となっていた。防災・減災において、地域コミュニティが重要な役割を果たすと考えられる中、防災訓練を含んだイベントが、地域で活動するさまざまな人たちを繋ぐ新たなコミュニティーの場となる可能性が感じられた。
 
 続いて行われたのは、同公園をいかに活性化していくかを話し合う「井戸端かいぎ」。青空の下、自分たちが暮らすエリアの公園をどう活用していきたいか、前回会議で出た「お花や緑を育てたい」という声の実現に向け、意見を交換しあった住民たち。年配の参加者から「トマトを植えたら」という案が出たかと思えば、子どもから「登れる木を植えたい」という声が出るなど、世代を超えて“自分たちの公園”像を自由に話し合ううちに「誰が育てるか」「予算は?」「次の会議で実際に参加したい人を募ろう」など少しずつ具体的な形にまとまっていった。

 このような住宅地の中にある小さな公園を活用する背景について豊島区・公園緑地課の担当者に話を聞いた。

「もともと豊島区では、消滅可能性都市と指摘を受けたされたことを機に、どうしたらもっと暮らしやすい街、子育てしやすい街にしていくことができるかを考えてきました。公園は、子どもたちや子育て世代はもちろん多世代の方も訪れることができる空間。都市公園などで大きなイベントを行い、多くの人を呼ぶのとはまた別に、こういった住宅地の中の小さな公園を活用して地域コミュニティを形成していこうという動きも大切にしています」

 コロナ禍で中断していた防災訓練を再開するにあたり、公園活用を組み合わせた催しとして開催。この日も、幅広い世代の地域住民らが参加した。公園活用プロジェクトがうまく回り始めているという。

「まずこの公園では町会の方々が、子どもたちが公園に集まるということを非常に好意的に受け止めてくださっています。今回のような催しもそうですが、公園を活用しようということになったとき、地域の方々がそれをどう受け止めるかが重要になってくる。今回のように地域の方々が一緒に話し合いを重ねることによって、地域の課題が浮かび上がったときにも話し合いの中で共に納得しながら進めていくことができるのではないかと思います。

 とくにこのような住宅地の中にある公園を活用するにあたっては、近隣の方とのコミュニケーションが非常に重要です。行政が“この公園をこうします”とするのではなく、地域の方々の“これがしたい”を行政がサポートすることが大事なのだと思っています」

「自治体の子育て支援制度に関する調査」2022年版(『日経xwoman』、日本経済新聞社調べ)では「共働き子育てしやすい街ランキング」全国1位を獲得した豊島区。今後も区内各所の“小さな公園”活用を地域住民とともに進めていくとのこと。