再生医療に培養肉、がん検査。ライフサイエンスの発展に日本が必要なこととは〈BEYOND 2020 NEXT FORUM〉
成功に至るまでの障壁、どう乗り越える?
セッションでは、まず「成功に至るまでの障壁」と題し、研究開発から事業化までのプロセスで乗り越えなければならない三つの障壁について意見交換した。
朝日氏は冒頭、ライフサイエンス分野においてイノベーションを実現するためには三つの障壁があると紹介。基礎研究から製品化を目指す開発段階まで繋げる困難さを「魔の川」、開発段階へと進んだプロジェクトが実用化されるに至るまでの困難さを「死の谷」、製品の市場投入から産業として確立できるかどうかの関門を「ダーウィンの海」とそれぞれを表現し、パネラーに意見を求めた。
循環器内科の医師だった清水氏は、1999年に細胞から組織を作る「ティッシュエンジニアリング」の研究開発に着手。現在、再生医療、動物実験の代わりになる創薬モデル、培養肉の研究といった、三つの研究を行っている。
清水氏によれば、再生医療分野は安全性の確立や、法律・ルール整備に苦労し、10〜15年の歳月を経てようやく「ダーウィンの海」へ泳ぎ出したところ。創薬モデルは、再現性や同一性の課題があり、現在、「死の谷」の真っ只中。そして、近年注目を集めている培養肉は、再生医療や創薬モデルと違い、すでに国内外の企業が率先して研究開発を進めているため、さまざまなプレーヤーがそれぞれ「魔の川」から「ダーウィンの海」へ挑んでいる状況だという。
清水氏は「大事なのは、研究者だけではなく、産官学の連携や法律・ルールを作る方々と一緒になってやること」と話し、国内外で開発競争が進むなか、研究開発を後押しする体制づくりが必要だと意見した。