赤ペン瀧川「僕は基本的にはコンプライアンスの順守だったり表現の規制については行けるところまで行けと考えているんです」〈インタビュー前編〉

「かつてこれがOKだったということを知るためにも昔の作品がある」(撮影・蔦野裕)

「今の価値観、今の自分の物差しで過去を図ると誤差が出る」

 配信は?
「ネットフリックスとか配信系はテレビみたいに垂れ流しているのではないので、割と自由度は高いと思います。割とやりたいことがやれている感じがします」

 映画でいうと、宮崎駿監督の『風立ちぬ』では病室で結核患者のすぐ横でタバコを吸うといったシーンなど喫煙シーンが一部の視聴者から問題視された例がありましたが、こういうことについてはどう思います?
「それは見る側の考えの至らなさではないかと思います。それはその時代の話なんだから、そりゃそうだよということを学んでほしい。それでいったら『となりのトトロ』だって、メイちゃんが行方不明になっているのにお父さんが病院に行っている場合じゃないだろうとか、サツキが帰ってくるまでメイちゃんのことをほったらかしにして“そのへんにいない?”って探しに行くのも、ですよね。そういうことをたたき始めたら、それは過去に対する勉強の少なさでしかない」

 古い話になってしまいますが勝新太郎の代表作である『座頭市』などは今では不適切な言葉となってしまった部分に音声処理をして放送したという話もあります。
「それには全く同意しないというか、かつてこれがOKだったということを知るためにも昔の映画があって、昔のドラマがあると思っています。なので、それをダメというのはナンセンスだと思うんです。座頭市の世界観がありな時代だったわけですから。ありな時代だったということを知るためにも過去の作品があるわけだから、今の価値観、今の自分の物差しで過去を図ると誤差が出る。それを知るために過去の作品があるんだから、全然問題ないと思うんです」

 冒頭に「昭和○年に作られたものです」といったテロップを入れるという気遣いがあれば、ですよね。
「まあ、それもいらないんですけど、ダメだという人たちに向けての対策としてはそれくらいは入れても仕方ないかな…」

 そもそも昔から最後に「この物語はフィクションです」というテロップを入れる配慮はなされています。それでも許さないという雰囲気はありますよね。
「それは敏感すぎると思いますね」
〈後編に続く〉

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