斎藤裕の「この試合は平本選手の分岐点になる」の言葉の裏にある11年前の上田将勝vs堀口恭司戦【RIZIN LANDMARK】
平本が弥益に勝利し「“……ちょっと待てよ”と……(笑)」
打撃理論の話に戻りますが、UFC王者になると目標を公言している平本選手のMMAキャリアのお手本とも言えるのが、現在ミドル級の頂点に立つイズラエル・アデサニヤ選手だと思います。その影響のほどはさておき、前戦で平本選手が選択した戦い方を本人は「打撃の塩漬け」と称していました。
「はい、それはよく分かります。僕としてもちょっとぐらい前から“打撃の塩漬けって、こういうことなんだな”と思うことはあって。あまり表に出して言うことはありませんけれど。寝技で塩漬けというと、トップキープしてあえて極めるところまでいかないということを意味しますが、平本選手の塩漬けは、自分の距離を保ちながらただ一方的に自分だけが打撃を当て続ける。そこで行くとまたいろんな展開が生まれるかもしれないので、あえて行かないということですよね。まあただ、僕と試合する時には違う作戦を立ててくるかもしれませんから、あまりそういうことにはとらわれずに、どういう状況にも対応できるようにとは思っています」
ところで、斎藤選手は最近になって朝倉未来選手と練習しているという噂が立ったことについても、ご自身の基本姿勢として「戦う可能性がある選手とは練習しない」ということで否定されていました。そんな斎藤選手が、練習を共にすることがあった同階級の平本選手に対して、いつ頃から戦う可能性を感じるようになりましたか?
「試合に関しては、やはり(弥益)ドミネーター(聡志)さんに勝った試合を見て“平本選手の次の相手は難しいな”と思ったんです。同時に“……ちょっと待てよ”と……(笑)。“僕、いいところにいる選手だな”みたいに、ひとりで勝手に感じていたんです(笑)。黙っていましたけどね、その時は(笑)。そうこうしているうちに実際に対戦するという話が浮上しました」
試合が近づくにつれ、インタビューなどで「この試合が平本選手にとっての分岐点になる」とおっしゃっていますね。
「はい、分岐点……、何年か経った後、そう思うんじゃないかなって。というのは、僕は上田将勝さんの試合をずっと修斗の時から見て来ているのですが、修斗で堀口恭司選手と対戦した試合(2012年のプロフェッショナル修斗公式戦)を、当時、会場で生観戦していました。堀口選手にとってはあれが初黒星だったんですよね。それで、次に堀口選手が負けたのって、2015年のデメトリアス・ジョンソン戦(UFC186 ジョンソンvs堀口)なんですよ。上田戦で敗北して以降、2013年にUFCに参戦してから4戦全勝で世界最高峰のタイトルマッチまでたどり着いている。ということは“あの試合で上田さんに負けたことでどれだけ強くなったの!? 堀口選手は!?”と思うじゃないですか。わずか3年くらいでそこまで上り詰めるのかと。フライ級という階級もあったと思いますが、振り返って、あの試合は間違いなく堀口選手にとって分岐点だったと言えると思います。そういう意味で、この試合があの時の上田 vs 堀口戦のような試合になるんじゃないか、僕はそう個人的に思っているんです」