役所広司さんの“正義”がダイレクトアタックしてくる宮沢賢治の生涯とその父を描いた映画『銀河鉄道の父』が想像以上の傑作だった!【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】

 この1週間も『J-BOTケロ太』の撮影で飯能の皆さんにお世話になっております。23日には41歳になりまして、そんなこともニュースにしていただきました。僕やJ-BOTケロ太を知るきっかけになるといいなあ、と思う今日この頃です。

 さて、今週も始めましょう。

『銀河鉄道の父』5月5日(金・祝)より全国公開 ©2022「銀河鉄道の父」製作委員会

 なんというか、映画は総合芸術なので「演技」とか「映像」とか「ストーリー」とか「音楽」とか、感想を書くときに「今回はどの角度を主題にしよう」とか、思うのですが、この作品に関しては「“全部”語りたい」!!!

 まず、筆頭は役所広司さん!演技って上手くなればなるほど「演じている人の人間性が浮き彫りになる」不思議な性質を持っていて、今回演じている「ちょっと抜けたところはあるが、とても優しい父親」役、孤狼の血で見せた「悪徳アウトサイダー刑事」とは真逆の役で「全く別人」に、見えるのに、両作を見比べると「役所さん本人の正義」が、浮き彫りになるような、すっげぇ素敵な演技でした。

「人として大事にしているところが、演技プランに映し出される」という感じですかね?

 菅田将暉くんも森七菜ちゃんもめちゃくちゃ良かった。

 映像は、冒頭から「人間ドラマを描くには、ちょっと色遣いがビビット過ぎない?」と思う様な、空が紫だったり、川が緑だったり、月が赤かったり、まるでファンタジー作品。

 元々映像の奇麗な監督だと思っていたのですが、今作は、オープニングシーンを筆頭に、その映像の全てが「ラストシーンに収束する」気絶しそうなほど素晴らしい構成でした。

 ストーリーは、言わずもがな宮沢賢治の一生の話なので面白くないわけないんですが、切り取り方が、父と賢治だけではなく、家族というか“一族の物語”として構成されているところに、唸りました。

 3世代出てくるのですが、そのすべての関係性が美しく「この家に生まれたから賢治の文学は生み出されたんだ」と、納得させられる。

 最後に「音楽」、エンディングにメジャーなJポップ歌手の曲が流れると冷めるタイプなんですが、今作の「いきものがかり」、すげー救われた!

“生涯”の話なので、絶対に最後は主人公が死ぬんですが、そのラストに「生きる」が入ってるグループ連れてくるなんて!もうそっから「最高だぜ」と。

 誰かに勧めるとしたら「観ないと損する」としか言いようのない超超傑作でした。

『銀河鉄道の父』5月5日(金・祝)より全国公開
©2022「銀河鉄道の父」製作委員会

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黒田勇樹(くろだ・ゆうき)
1982年、東京都生まれ。幼少時より俳優として舞台やドラマ、映画、CMなどで活躍。
主な出演ドラマ作品に『人間・失格 たとえば僕が死んだら』『セカンド・チャンス』(ともにTBS)、『ひとつ屋根の下2』(フジテレビ)など。山田洋次監督映画『学校III』にて日本アカデミー賞新人男優賞やキネマ旬報新人男優賞などを受賞。2010年5月をもって俳優業を引退し、「ハイパーメディアフリーター」と名乗り、ネットを中心に活動を始めるが2014年に「俳優復帰」を宣言し、小劇場を中心に精力的に活動を再開。
2016年に監督映画「恐怖!セミ男」がゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて上映。
現在は、映画やドラマ監督、舞台の脚本演出など幅広く活動中。

公式サイト:黒田運送(株)
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