「コンセントの穴はどちらが大きい?」「シリアの子どもの夢が“医者か教師”の理由は?」堀潤らが中学生に“固定観念を覆す”特別授業

撮影・上岸卓史

 つい先日、日本人が退避したスーダンの情勢を分かりやすく解説しつつ、ただ一人現地に残った国際NGO「日本国際ボランティアセンター」駐在員の今中航氏を以前に取材したときの写真を紹介。「今中さんはとくに子どもたちの教育支援を続けている方。学ばないと、将来に自分の夢を実現する力が生まれない、こんな時こそ子どもたちを支えたいと、現地に残られたそうです。今、皆さんは今中さんの写真を見ましたね。これからは、1人を除いてスーダンから日本人が退避したというニュースを見るたびに彼の顔を思い出すのではないでしょうか」と生徒たちの顔を見渡した。

 そんな取材の中で、自信も固定観念にとらわれてしまっていたことがあったと明かした堀氏。「シリアの難民キャンプを取材したときのことです。そこで暮らす子どもたちに、将来の夢はと聞くと、ほとんどの子がお医者さんや学校の先生になりたいと言うんです。こんな状況でそんな職業を目指すなんて偉いねと言ったら、現地の先生から“違うんです、この子たちは人道支援で派遣されてくるお医者さんか教師しか職業を知らないんです”と言われて、ハッとしたんです。その子たちの親も難民となったために仕事を失い働くことができないでいるため、子どもたちは世の中にいろいろな職業があることを知らないんですね。もし現地に取材に行ってなかったら、そしてその説明を聞かなかったら、僕もそんなことに気づかなかったかもしれない。僕たち報道に関わる人間も、自らの固定観念にとらわれないよう、現場を取材する必要があると思っています」と語り掛けた。

 質疑応答の時間では、教室の生徒たちから次々と質問が上がった。「これまでどれくらいの国に取材に行きましたか」という質問に堀氏は「世界には196カ国の国がありますが、そのうち僕が行ったのは30カ国ほど。4分の一しか行ったことがないので、知らない世界のほうが多いんです。それに、もし全部の地域を回ったとしても、10年もたてばその国も大きく変わる。事実の探求に終わりはないんですね。行ったことがある国も、いつの間にか知らない国に変わってしまう可能性もある。だから、関わり続けることで常に情報をアップデートする必要があるんです。ぜひ皆さんにも世界のいろいろな場所に行ってみてほしいです。そして“堀さんが行ったときはこうだったかもしれないけど、私が行ったときにはこうでしたよ”と教えてほしい」と呼びかけ、固定観念にとらわれず多様な視点で将来の夢を見てほしいと生徒たちに語り掛けた。