黒田勇樹「バブルがあって、映画も演劇も法令順守のルールがテレビ局に準じたものになってしまった」〈インタビュー前編〉
(撮影・堀田真央人)
先ほどの演劇上の突っ込みの話が、今の「文字にしたら」にあたるわけですね?
「ここにちゃんと突っ込みを入れることで“問題意識は持っているんだよ。でもどうしたらいいんだろうね?”っていうところまで入れないと、今はクローズドだったりミニマムな現場でも難しいんですよね」
与えられた状況の中で頑張るしかない?
「そうですね…。『はだしのゲン』が問題視されたり、シンデレラのお姉さんたちが幸せになったりする世の中ですから。シンデレラのお姉さんたちは本当はかかととつま先を切られて、すげえ不幸に暮らすのに。この前、シンデレラを題材にした作品を作ったんですが、グリム童話版のラストって、めでたしめでたしではなく“姉たちは一生不幸に暮らしました”が最後の1行ですから」
最近は「かちかち山」もハッピーエンドになっていますね。
「まあ、作者がいないから微妙なんですよね。民話なので口伝ですから。作者がいるものはいじってはいけない。『羅生門』のラストで老婆と盗賊が幸せになったらダメですが、かちかち山は口伝なのでぎりぎりセーフかも。シンデレラも口伝で、どっかの民話をグリムとかいろいろな人がお話にしているんで、いろいろなラストがある。ディズニーが作ったものがメインにされていますが、原作者はいないんです」
〈後編に続く〉