〈今年に入り5000人超〉東京都で急増する「梅毒」とは?【気になる医療キーワード】

東京都医師会理事で感染症担当の川上一恵先生

「梅毒」の検査と診断方法は?

 いくつかの検査方法がありますが、都内の保健所や都の検査室では匿名・無料でHIVと梅毒の抗体検査を受けることができますし、ほとんどの医療機関でも抗体検査に対応しています。感染機会から4~6週間以上経過していれば検査可能で、症状がある場合は保険診療が適用されます。人間ドックや妊娠初期の検診、ブライダルチェックなどで判明することもあります。見逃しを防ぐため、さらに1カ月後にも検査をおすすめします。

「梅毒」の治療方法は?

「梅毒」は早期に治療を開始すれば完治できる病気で、治療にはペニシリン系の抗生物質が有効です。内服薬の場合、第1期では2~4週間、第2期では4~8週間、第3期以降では8~12週間程度、1日3回の服用が基本です。風邪などの治療にも使われる一般的な抗菌薬なので、処方せんを持って薬局に行っても恥ずかしくありません。ペニシリンが使えない場合は別の抗生物質や、医療機関によっては1回の通院で治療できる注射薬もあります。治療期間は病期によって個人差があり、定期的な抗体検査の結果を見て医師が判断します。

 また、パートナーなど周囲の感染の可能性がある方も検査を受け、必要に応じて治療を受けてもらうことが大切です。抗菌薬で治療しない限り体内に「梅毒トレポネーマ」が残っており、治療が不十分な場合は再発したり、完治しても再び感染することがあります。症状がなくなっても自己判断で治療を中断しないようにしましょう。

「梅毒」の予防は?

 性行為の際は最初から正しくコンドームを使用しましょう。ただし、コンドームが破れていたり穴が空いたり、途中から装着した場合など完全に予防できるわけではありません。また、コンドームが覆わない部位から感染する場合もあります。低容量ピルは避妊には役立ちますが、性感染症の予防にはならないので注意してください。

 不特定多数の人との性行為がリスクを高めることはもちろんですが、現在は特定のパートナーだとしても、過去の交際相手から感染している可能性があります。心配な場合はパートナーも含めて検査を受けてみましょう。

「梅毒」の症状が疑われたら?

「梅毒」の症状が疑われたら、外性器の場合は婦人科や泌尿器科、手のひらや足の裏なら皮膚科を受診してください。アレルギー性皮膚炎やじんましん、手足口病の症状と間違われやすいのですが、 “もしかして” と疑ってみることが大事です。