亀田誠治が創る “思いやりと優しみ” の都市型フェス「日比谷音楽祭2023」

会場のひとつ、日比谷公園大音楽堂は今年で100周年を迎えた(「日比谷音楽祭2022」より)

日比谷野音100周年への思い

 数々の苦難を乗り越えてきた日比谷音楽祭。改めてその意義を聞いた。

「やはり思うのは、ソーシャルディスタンスよりもマインドディスタンスのほうが怖いということ。これはコロナ禍で浮き彫りになっただけで、本質的に人間社会がはらんでいる問題です。人間って放っておくとどうしても心と心の距離が開いてしまう。親しかった友人と疎遠になることもあるし、男女も付き合ったり別れたりするし、時には疑いの気持ちや憎しみの気持ちが生まれたりする。その距離を埋めていく存在が音楽なんだと。もちろん人間同士の思いやりが一番大事ですが、その間を空気中の粒子のように漂っているのが文化や芸術じゃないでしょうか。それを実感させてくれる音楽祭ですね」

 今年は日比谷野音が1923(大正12)年に誕生して100周年。亀田自身の思い出は?

「思い出だらけです。お客さんの立場でいうとキャロルの解散コンサートや “普通の女の子に戻りたい” とキャンディーズがマイクを置いたのは野音ですし、尾崎豊さんが照明台から飛び降りて骨折したのも衝撃的でした。野音はいつも何かワクワクドキドキすることが起こる場所に見えました。

 アーティストとしてステージに立ったのは結構遅くて、椎名林檎さんのデビュー直後のイベントでした。その時思ったのは、やっぱり野音はすごい場所だなということ。目の前にビルと木があって青空が見えて、自分が弾いている音が東京の街、さらにその先の宇宙へ広がっていく、そんな感覚にさせてくれる場所は他にないですよ。アーティストと観客、お互いの表情や息づかいまで感じられる野音の距離の近さ、一体感は、実際に足を運んでみないと分かりません」