都医師会・尾﨑会長、少子化対策の財源に私見「全世代平等な負担となるのが望ましい」
東京都医師会の尾崎治夫会長は、13日の定例記者会見の中で政府が推進するオンライン資格確認や少子化対策の財源について意見を述べた。
尾﨑会長は、オンライン資格確認について「最初から完璧な仕組みにはできないと思う」と切り出し
「今の問題点は、オンライン資格確認自体の仕組みもそうですが、導入には顔認証付きカードリーダーを複数種類から選んで、自由にシステム事業者の選定を行って、補助金は出しますよというもの。業者が責任感を持ってしっかり対応くださることが前提で、実際に導入しても動かないなどいろんな事例を聞いている。政府は “補助金を出すからどんどんやってください” ということですが、事業者の選定にしても現場の医師があまり苦労しないやり方にしてもらいたい」と苦言。
そのうえで「オンライン資格確認そのものは、今後の医療ネットワークの基盤となることで、必要ないとは思わない。マイナンバーカードはいろんな情報をひも付け、ポイントを付与するなどしたことであっという間に申請が増えた。自治体や健康保険組合の職員が手作業でデータ入力しているのでヒューマンエラーが起きているが、それが完璧に絶対にないということは難しい。そういう意味では過渡期だと思うので、拙速に進めてきたものをきちんと見直し、しっかりした体制を作っていただきたい」と注文をつけた。
また、政府が少子化対策の追加財源に社会保障費の歳出削減を検討していることについて「なかなかひと言で答えられる問題ではない」としながらも
「これからの医療を考えると高齢者が増えていくことは間違いない。ということは若い方に比べ、複数の病気を併発している方や要介護者が増え、医療の進歩に伴う医療費の増加もある。必然として医療費・介護費は増えていくと思うが、財源の確保がないまま歳出削減をすれば、結局は今の医療・介護サービスの質を落とすことにつながる」と懸念を示し、
「社会保険料の負担増も検討されているが、そうすると今、少子化で苦しんでいる若い世代に負担が行ってしまう。私なりに考えた時に、ある意味で全世代平等な負担となる消費税を上げる道が望ましいのではないか。政治家の方たちも財源の必要性は認識しているが今、増税を提案しても国民の理解を得られないのでそうした議論にならないと聞いている。今の医療・介護を守るという形から言えば、その財源を確保していかないと難しいと思う」と提言。
さらに踏み込んで「たとえば今、複数の医療機関で同じような検査を受けている方がたくさんいらっしゃる。複数の医療機関で薬を処方され、ポリファーマシー(多剤併用)の問題などいろんなケースがあるが、医療DXを進めていければある程度解決していく。私どもも適切な医療機関の受診や処方、あるいは患者さん自体に考えていただいて、無駄と思われるような医療を減らす努力はしていくべき。ただ診療報酬を上げてくれとか、社会保障費の財源を確保してくれという話だけでは、都民も国民も全く納得しないと思う。私どもも無駄な支出が起きないよう努力しながら、都民や国民に必要な医療や介護を提供するためには、それなりの財源がないと今の水準は維持できないということは主張していきたい」と私見を述べた。