都医師会、第9波の感染動向を注視「患者さんに検査を断られ、報告数が下振れする傾向」
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の会長を務めた尾身茂氏が「第9波の入り口に入ったのではないか」と発言して注目を集めている。東京都医師会の猪口正孝副会長は、定例記者会見で都の感染動向について次のように語った。
猪口副会長は、8日公表のモニタリング分析を「定点医療機関あたり患者報告数は5.29人(5月29日~6月4日調べ、1医療機関あたり)で、前週に比べて約130%程度増えている。大雑把に全数換算すると約4500人で、第8波で警戒レベルがオレンジ色から赤になった時と比べると、昨年7月6日が1日あたり4395人でオレンジ色、同月13日が1万110人と前週比約2倍で赤に引き上げた。現在は1週間で2倍になるスピードはなく、今週もそこまで増えていないので第8波ほどの増加傾向ではないと思われる」と報告。
「60歳以上の患者報告数も増えてきているが、保健所区域別の患者報告数は9.00人(墨田区)や8.00人(荒川区、文京区)というところもあるが、2.05人(島しょ)もあるなど地域差がある。地域差があるということは、患者数全体はそれほど大きくないということにもつながる」と分析した。
♯7119における発熱等相談件数は「5類相当に移行した時にやや上昇したが、その後はあまり増えていない」、救急医療の東京ルール適用件数は「高止まりのままで、13日時点の7日間平均で約90件を超えている。救急に関してはややひっ迫状態」と評価。
入院患者数は「5月29日時点で900人、6月5日時点で983人ですが、今週に入って約850人程度まで減っている」としたうえで、
「調子が悪くて診療検査医療機関にかかって、検査をお願いしても費用が発生するので患者さんに断られ、定点観測の数字が実際より下振れする傾向がある。一方で入院は症状がかなり悪化しないとできないので、バイアスがかからない入院患者数が本来の患者数の実態を表しているのではないかという見方もある」と解説する。
「そういう意味でいうと先週まで入院患者数が増えているが、現在は減っている傾向にも見える。今の状況をはっきり増加傾向にあるとは言いづらく、15日夕方のモニタリング分析の結果を見て対応していただきたい」
さらに今後の情報発信について「2類のように規制があるわけではないので、今、医療提供体制がどういう状況にあるのかをなるべく早く、できれば2週間前、4週間前にお知らせする。医療関係者にも、こういう準備をしなければいけないということをなるべく早く働きかけたい。
ただし、5類に移行してから医療がどうひっ迫するのか読み切れないところがある。東京都から皆さんに『発熱などの症状が出たら』というリーフレットを示しているので、調子が悪いと思ったら外出しないで、自分で用意した検査キットを使ってから医療機関の受診を判断していただきたい」と都民に呼びかけた。