〈日本とモルディブの意外な関係〉国民食はカツオ。東日本大震災では救援物資を寄付
2011年、日本が東日本大震災に見舞われた際、モルディブから津波被災地へ、救援物資として70万個以上のツナ缶が送られ、多くのモルディブ人(約35万人)が寄付をした――ということは、あまり知られていないかもしれない。
日本とモルディブは、1967年11月に正式な外交関係を樹立し、昨年11月には55周年という節目を迎えた。実は、日本とモルディブの関係性は長く、深い。
モルディブと聞いて、多くの人が思い浮かべるイメージは、“リゾート”や“透き通る海”といった観光的な側面だろう。では、どんな食べ物を食べ、どんな暮らしをしているのか? モルディブがどのような国なのかは、知っているようで知らない。
「モルディブには、ガルディアというカツオのスープがあります。風味づけにカレーリーフや玉ねぎなどを入れ、ご飯にかけて食べる。ガルディアは、モルディブの国民食です」
そう教えるのは、モルディブ大使館・副大使のモハメッド・アミートさん。なんでもカツオやマグロは、モルディブ人の食卓に欠かせない食材なんだそう。
「14世紀末に、モルディブで鰹節が作り始められました。その後、15世紀初頭に日本が同じ魚を使って鰹節を始めたと言われています。また、モルディブでは、今現在も延縄や底網などの網漁は法律で禁止されており、近海では環境に優しい漁業である一本釣りしか法律で認められていないんですね。日本の高知県でも、カツオの一本釣りがあると思いますが、まったく同じ光景がモルディブの海でも広がっているのです」(アミートさん、以下同)
もしかして日本の一本釣りは、今から数百年前にモルディブから伝わった? そう尋ねると、「それは定かではありません。ですが、日本とモルディブは意外にも親和性が高いのです」とアミートさんは笑う。救援物資としてツナ缶を送った背景も、1970年代に日本の支援でモルディブにツナ缶工場が建設されたことに起因するそうだ。その寄贈されたツナ缶工場で作られたツナ缶を東日本震災時の救援物資に贈ったことから、ツルならぬ“ツナ(缶)の恩返し”と呼ばれているという。