小池百合子東京都知事インタビュー「『未来の東京』戦略」はバージョンアップだけでなくゲームチェンジするくらいの勢いが必要

東京都こども基本条例についても広く周知(撮影・堀田真央人)

 小池都知事も過去にメッセージを寄せている「こども未来国連会議」が国連の認定を受け「国連を支える世界こども未来会議」に名称を変更し、7月19日にはニューヨークの国連本部でプロジェクトを発表します。2024年には都庁で「第4回 国連を支える世界こども未来会議」を開催の予定で、子供政策については東京都は民間とも連携してさまざまなアプローチを行っています。その中でも先進的にやられている「こども未来会議」の取り組みについて教えてください。

「『こども未来会議』は“子供が笑顔で子育てが楽しいと思える社会”づくりを念頭に、これまでの取り組みにとらわれない、これまたゲームチェンジくらいの勢いで、幅広い視点から先進的な子供政策の方向性を議論し、発信していこうと、令和2年9月に立ち上げました。子供政策の有識者、ミレニアル世代、Z世代のNPO代表などに、専門的で多角的な議論を展開してもらっています。

 これらの会議を経て『こども向け予算書』も作りました。議会の予算書はものすごく分厚いのですが、私が昔、ワシントンに行ったときに議会で子供用の予算書も一緒に作っているのを見て、素晴らしいと思ったんですね。予算がどのように使われて、それが自分たちの生活にどのように影響しているのか、こうしたことを将来のタックスペイヤーに理解してもらうことが必要と感じたのです。その後、知事になってからこういう取り組みを始めたのですが、結構、大人が読んでもなるほど、と思うものになっています(笑)。

 昨年4月には、子供たちに分かりやすく都の魅力などを伝えるため『東京都こどもホームページ』というサイトも立ち上げました。去年の11月には、乳幼児期の遊びや経験が生涯にわたってウェルビーイングに大きな影響を与えるとの提言もいただきました。子育ての環境づくりとして、幼稚園、保育所といった施設類型の垣根を越えて、子供を預けられるようにする。保護者が働いているか働いていないかによって、保育所なのか幼稚園なのか左右されてしまうのは大人の縄張り争いの影響です。子育て中に仕事を辞めてしまい女性の就業率が一度ガクンと落ちて、その後に上がるというM字カーブは、今ではほぼ解消しつつあります。だから保護者が働いているかどうかで子供がどこの施設に入るかを決める時代はもう変わっているのです。

 日本では子供の預け先で悩む、あるいは預けるところをちゃんと確保するためには何月に妊娠して、何月に出産して、と真剣に考えていらっしゃいます。でも“それでいいのですか?”という話ですよね。待機児童については、私が最初に知事になった時(平成28年)、待機児童の数は8466人でしたが、今年4月時点の速報値は286人です。ゼロとまではなっていませんが、劇的に減少しました。引き続き、子供、そして、子育て家庭を支援する、そのために、多様な保育サービスの充実に取り組んでいきます。

 今年3月の会議では『東京都こども基本条例ハンドブック』の編集活動に携わった子供たちが出席してくれました。こちらのハンドブックは、大人向けに加えて、手に取った子供誰もが理解しやすいように、小学1~3年生、4~6年生、中学・高校生の3つの区分で作成しています。こういったいろいろな工夫をしながら、子供の声をしっかり聞き、進めています。第9回のこども未来会議のテーマは“ありのままの多様な子供を育む学び・居場所の在り方”ですが、まさにチルドレンファースト社会を実現しようという覚悟が伝わらないといけません。ぼやっとした感じではなかなか進まないですね」