坂上忍、沖縄・伊江島の葉たばこ農家に弟子入り!?「たばこになる過程に興味があった」
伊江島のたばこの火を消してはいけない
知念さんは、改めて葉たばこ農家を継いだ理由を「作物は何でも一緒だと思うのですが、手を掛ければちゃんと返ってくるところが魅力的なんです。手を抜いたらやっぱりその分の収穫量しかできません。やればちゃんと返ってくる、そういう仕事がやってみたいなと思ってね」と振り返る。目下、頭を悩ませているのは労働者不足と後継者問題だ。
「伊江島には今、41軒の葉たばこ農家があるのですが、収穫の時期は共同乾燥施設を入れると島全体で100人くらいの人が島外から働きに来ます。小さな島の中で労働力を確保するのは難しいので、広告を出して県外から来てもらっています。収穫時期にある程度の人数を確保しないと、いくらいい葉たばこができても枯らしてしまう。葉が熟すのを待ってから収穫するんだけど、タイミングを逃すとマイナスになるから。
今後の課題は、いかにして伊江島の葉たばこ栽培を後世まで残していくか。みんな親元を離れたいから、一度伊江島から出て仕事して、向こうで定着すれば帰ってくる人はなかなかいない。葉たばこは伊江島の基幹産業のうちのひとつで、さとうきび・葉たばこ・キクは3つの柱。この3つのどれかひとつでもなくなると過疎化が進むんです。今日見学した共同乾燥施設では、あと20年は葉たばこ栽培を続ける心構えで、3年ほど前に環境負荷を低減するエコ乾燥機を導入しました」(知念さん)
知念さんは「葉たばこ栽培というのは輸送コストがかからず、全量買い付けしてくれる離島にとって素晴らしい作物です。毎年11月頃に行われる審議会で翌年の葉たばこの価格が決まり、他の作物のように豊作になっても下がることはない。自分の作った葉たばこの品質が良く、豊作になったほうが稼げるから、ものすごくやりがいがあるんです」と力を込めると、坂上も「僕にとってたばこがなくなることは考えられないので、願わくば後継者問題は解消されてほしい。やりがいを持って働ける土壌があるということが、もうちょっと周知されたらうれしいですよね」と同調する。
最後に生産者であり、愛煙家でもある知念さんに “たばことは何か” を聞いてみた。
「葉たばこ栽培は生きがいでもあるし、自分が年を取って動けなくなるまで続けていきたい。葉たばこは素晴らしい作物で、ちゃんと管理して最適なタイミングで収穫すると良質な葉たばこになります。もちろん気象条件は毎年変わるのですが、それがあるから自分の中で “今年はこうしよう” と考えながら栽培できる。たばこは世の中から絶対になくならないと思っているけど、そのためには伊江島もたばこの火を消してはいけない。みんなで一緒に後輩に対して指導しながら、ずっと葉たばこ栽培ができる環境を作っていければと思っています。
たばこは心の安らぎにもなっていて、仕事終わりとか考えごとをする時はたばこを吸いながら “明日はこうしよう” とボーッと考えます。収入のほとんどが葉たばこだから、考えているのもずっとたばこのことなんだけどね(笑)」(知念さん)
取材を終えた坂上は「市川崑監督はくわえ煙草に便利だからと前歯を1本抜いたのですが、僕の指にもずっとたばこが挟まっていて、肉体の一部に等しいくらい吸いまくっています(笑)。収穫体験を行うようになって、さらにたばこに愛着が沸いて大事にしようと思うようになりました。たばこの価格は上がっているけど、葉たばこ農家さんが手間暇かけて作っているのを見たら、それでも安いんだろうなと感じます。一次産業の人たちが労働に見合う対価を得ないと、社会が健全に回っていかないですから」と葉たばこ栽培の未来に思いを馳せた。