“アニソンの神” 梶浦由記、初の全曲詩集に「こんなに言葉って人が出てしまうんだな」
『鬼滅の刃』『魔法少女まどか☆マギカ』『Fate』『機動戦士ガンダムSEED』『ソードアート・オンライン』など数々の人気作品を手掛ける梶浦は創作で一番大切にしてきたことを「タイアップの曲、何かの作品に付随するような曲というのは用途があるので、見てくださる方の心に何らかの形で届かなければいけない。オープニングは作品のイントロだと思っているので、聞き終わった時にその作品の中にジャンプする心の準備ができるための扉。エンディングはアウトロだと思うので、見終わった後にその作品から現実に戻ってくるための扉。そういう役割がタイアップ曲にはある」といい、
「原作もしくは脚本をとにかく読めるだけ読み込んで、一体何を言葉にしてどんな音楽にしたら今度の作品にふさわしいか、ワクワクして作品の中に入り込んでくれるためにはどんな言葉、どんな音楽がふさわしいかというのを研究するところから始める。用途のない音楽、ただ自分の音楽を愛してくれる人のために書くような音楽には、何に使うとかこうでなければならないという必要性がないので、自分が今好きなこととか今考えていること、今やりたいことが意図せず自分に見えてくる。本能のままに作ってみると、本能のままに言葉を並べてみると自分はこんなことを考えていたんだとか、自分を映す鏡のようなところがあってすごく面白い」などと原動力を明かした。
さらに「本来は歌詞に自分の気持ちを乗せたくないほうなんですよ。もともとオペラなどが好きで音楽の世界に入っていて、オペラや歌曲の歌詞って作詞家の心ではなく全部物語なんですよね。その中に出てくる若者や死んでいくヒロインの心情という歌詞が多かったので、自分の気持ちを書くよりはどこか異国の物語のような情景を歌詞に乗せるのが好きだった」という梶浦は
「それでも10年前に書いた歌詞を読んでいくと、全然そんなつもりなかったのに “そういえばこの頃こんなこと考えていたな” ということが結構表に出てきていて。私が表に出す言葉というのは歌詞だけなので、普通に文章を書かれている方と比較すると少ないんですけど、それでも何かを言葉にして残すというのはものすごく怖いことなんだな、と。こんなに言葉って人が出てしまうんだなということは、自分の歌詞を見るだけでもすごく感じますね」と分析した。
最後に、今後について問われると「とにかく音楽を続けたい。最近、“若い人たちに何か教えてあげてください” と言われることがあるんですけど、ひとつだけ教えられることがあるとしたら “30年やっても音楽は本当に飽きないよ” ということ。ますます楽しくなっていくから、どうぞ安心して楽しんで音楽を続けてくださいということだけは教えてあげられると思っています。私もあと30周年くらい目指して、まだまだ大好きな音楽を続けていければというのが最大の抱負」と力強く宣言した。