『ニホンという病』養老孟司×名越康文が明かす「第二の田舎」の見つけ方

 解剖学者の養老孟司と、精神科医の名越康文による『ニホンという病』(日刊現代)が発売された。夕刊紙「日刊ゲンダイ」での連載をもとにコロナ禍の日本社会や、これからの日本はどうあるべきかについて対談形式でまとめられ、テーマは新型コロナウイルスやロシアによるウクライナ侵攻、環境問題、地方創生、ダイバーシティなど多岐に及ぶ。

 中でも我々に身近な生き方について語られるのが「自分の田舎をつくる」という章だ。これは今、住んでいる場所とは別の田舎を見つけるというライフスタイルを指し、自分の居場所を自分で決める生き方ともいえる。閉塞感漂うこの国で、私たちはこれからどう生きればいいのかを2人に聞いた。(全2回のうち第1回/後編に続く)

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左から『ニホンという病』(日刊現代)を上梓した名越康文、養老孟司(撮影:齋藤日南子)

『ニホンという病』では、都市部への一極集中からの分散の動きや、各人が「第二の田舎」を見つけるなどのライフスタイルについてまとめられています。今後日本はどのように変わっていくべきなのでしょうか。

養老孟司(以下、養老)「一人ひとりが自分の居場所を決められるようになるところから、この国が変わっていけばいいなと思っています。一番まずいシナリオが、再び日本が震災に見舞われた時、アメリカなり中国なりから大きなお金が入って復興が始まってしまうことです。

 日本人は人に頼る癖があって、誰かが何とかしてくれるという考え方ではいけません。それを自分でやっていこうという気持ちがみんなに生じるかどうかが分かれ目になると思いますよ。別に肩に力を入れるという意味じゃなく、ちゃんとしっかり自分の生きる範囲を自分たちで決めていくことが、この国の人にできるのかなという思いがありました」

名越康文(以下、名越)「僕も基本的には養老先生と同じ考えなんですね。この本で言っていることは、社会の状況をある種評論したり、予測したりしてる側面もあります。一方でじゃあどうするかというところに関しては、すごく個人のスタイルに特化していっていると思います。

 自分たちが例えばあと20年なり40年なり60年なりを、どういう価値観や環境の中で生きるべきかを考えた時に一番充足しているやり方は何か、ではないでしょうか。この本をきっかけに、もう一度自分が日々どういう中で充実するのかを考えるきっかけになったらいいんじゃないかなとも思っています」

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