『ニホンという病』養老孟司×名越康文が明かす「第二の田舎」の見つけ方

「一人ひとりが自分の居場所を決められるようになるところから、この国が変わっていけばいい」と養老

「第二の田舎」を見つけるというのは、究極的には自分の住む場所を自分で決めるという部分もあると思います。一人ひとりのこうした動きが、日本という国が自分で意思決定するところにもつながっていくということなのでしょうか。

名越「一足飛びに言うとそういうことになると思います。ただ、大事なのは日頃の生活の中で自分でちゃんと選んでいるかどうか。あるいはその前に、いま今日の現実を受け入れているかどうかというところだと思います。それを積み上げていくと、新しいライフスタイルの構築につながるとは思うのですが、そこにつながる考え方を本から読み取ってもらえるといいですね」

養老「住むところというのはどういう日常生活を構築するかということにもつながります。集落単位で言えば、食料の自給が可能かどうか。水やエネルギーがどうかなど、大きくこの三つのことを考えなければなりません」

「第二の田舎」という流れで言うと、今、国内のさまざまな自治体が地方創生に力を入れています。

名越「結構盛んですよね。でも、今はまだ目に見えて推進しているところと、新しい価値観の中でちょっと翻弄されているレベルとが混在している感じだと思います。地方創生の取り組みやノウハウがきちんと共有されていないというか、なだらかになってないというか」

 確かに0か1かというように、やるところは積極的に推し進めていますが、ついていけていないところは置いていかれてしまっている感じがしますね。

名越「そうそうそう。僕も地方にいることが多いのですが、そんな感じに思いますね」

養老「上から降ってきたものではダメですね。福島県須賀川市のムシテックワールドで20年館長をやっていたんですけど、やっぱり虫がテーマなので、地元に好きな人がいないとこういうものは成り立ちません。だけど役所が作っている施設だから、今度は地元の好きな人がそこに入れないんですよね。入り込めない。

 同じく福島県の田村市では、今度は虫でまちおこしに取り組んでいます。ムシムシランドといって、カブトムシを1000匹放すとか言ってますけど、これもどこまで続くかですね」