『ニホンという病』養老孟司×名越康文が明かす「第二の田舎」の見つけ方

「大事なのは日頃の生活の中で自分でちゃんと選んでいるか。その前に、いま今日の現実を受け入れているか」と名越

 恐らく20年ぐらい前は虫でまちおこしをするという発想もなかったと思います。そういうふうに社会が変わっていっているのでしょうか。

養老「田舎に行って、車の調達から水をどこから持ってくるか、エネルギーをどうするかも含めて、自分で自分の生活を管理するようにできればね、まさに自立できるわけですよ。今の人はそういう意味で自立していませんから」

 自立するためにはどういう心構えが必要なのでしょうか。

養老「やっぱり日常生活で人に頼らないで、自分自身で考えることですね。僕も大学で学生によく言っていたんですけど、やっぱり生活自体人に頼っている状況だと、自分で考えるというのは難しいんですよね。

 若者の親の世代も、若い人の自立については、経済的に自立することが自立だと思い込んでいます。そうじゃなくて、人に頼らなくても大丈夫なようにできることが大切です。ただ、別に人にやってもらったらいけないというものではありません。やってもらっていることを自分で理解した上で、それに頼り切らずに上手にやれるというかね。そういう心構えを持つことが自立につながっていくのだと思います」

名越「ただ、今までの価値観を鵜呑みにしない若い人は増えてきているとは思います。今まで自分が頼りにしていた価値観が頼りにならなくて、何か知らない間に飲み込まされてきたものだと思い始めているような感じですね。逆に、Z世代と呼ばれるような20代の人とかは、新しい価値観を暗中模索して、築き上げてきている人も増えているような印象はありますね」

(取材・文:河嶌太郎)