『ニホンという病』養老孟司×名越康文、生成AI時代のクリエーティブとは?
ChatGPTなど生成AIの発展によって奪われたホワイトカラーの人が、一次産業に従事する時代が来るかもしれないですね。
養老「そうなっていくのは当然だと思いますけどね。情報産業も典型的です。情報そのものを生み出す側の仕事も一次産業だと思っているのですが、ここもまだ非常になり手が少ないですよ。情報を流通させる二次、三次産業が多すぎるんですよね。だから情報を上手にまとめて、ChatGPTのウソみたいなのができるわけです。
例えば統計にしても、統計的なものを処理するのはコンピュータがものすごく得意ですけど、統計に入れるデータをどう取るかっていうのはコンピュータにやらせられないでしょ」
名越「人間の想像力とか、発想力にChatGPTが協力するっていうような形で、もっと新しい農業の仕組みが生まれていくとすごいことだなと思いますね」
ChatGPTで農業に就かれる方が増えるという見方もできるかもしれないですね。
名越「そうそう。実際に若い人たちで“やりたい”っていう人が結構増えている話もちらっとは聞きますけどね。ただ、就業までのハードルが高いから、そこをうまく埋めてあげられるような部署が必要だと思いますね」
養老「若い人が田舎に入っていくのは結構大変でね。よく畑とか田んぼで年寄りがね、“後継者がいない”とボヤいていますよ。そういうのをテレビで見たりすると、お前がいるからだろって。それは間違いなくあるんですよ。だから田舎の人は田舎の人で、考えなければいけないところがあります」
名越「土地の問題など、外からの人だと入り込めない場所がいっぱいありますものね」
養老「前に聞いた統計で面白いと思ったのが、過疎地の人口はどんどん減っているけれども、増えてるところがあるんですよ。どういうところかっていうと、もうあまりにも過疎のところ。つまり、あまりにも過疎の場所っていうのは年寄りも死んじゃっていない。そうすると若い人が増えてくる」
名越「参入の壁がなくなっているからですね。結局そうやって変わっていくというのは、歴史ってそういうものなんでしょうね」