『ニホンという病』養老孟司×名越康文、生成AI時代のクリエーティブとは?
こうした場所に若者を中心に「第二の田舎」を見つけていく時代が訪れると思うのですが、ハードルもありそうですね。
養老「年寄りが減るのを待つしかないです(笑)」
名越「移住までいくとそういうことになるんでしょうけど、その前に自分の好きな地域のおじいちゃんおばあちゃんがやってる居酒屋とかの常連になるところから始めるということもおすすめなんです。それ以外でも、年2回ぐらい自分が“第二の田舎”と決めたところに通って、一度行ったらしばらく滞在するといいですね。それで居酒屋とか市場に顔を出して、少しずつ顔を覚えていってもらう。なんとなく思い立ったら、さっそく今から始めて、数年かけて少しずつ関係の輪の中に入っていく、というのがいいんじゃないかなと思っています。行動は早めに、そしてじっくりです」
中高年でも別荘から始めて最終的に移住するとか、さまざまな形がありますね。一極集中は緩和されていくということでしょうか。
養老「今の状況で続けられるはずがないので、そう変わらざるを得ないですね。まさにSDGsです。ひとつサステナビリティをするにはどうするか」
名越「こないだ鳥取に講演に呼ばれたのですが、地元の情報は実際に足で稼いだほうがよいですね。東京だと一人5万円かかるようなカニ料理が、1万円から1万5000円の場所もある。それだったら、交通費を払ってでも毎年通いたいですよね。そこから現地の知り合いもできていけば“第二の田舎”になっていきます」
例えばアニメの「聖地巡礼」でも、きっかけは作品の舞台探訪だったものが、何度も訪れていくうちに中には移住してしまう人もいます。これも全く同じといえそうですね。
名越「まさに同じですね。“第二の田舎”作りのきっかけは何でもいいんです。聖地巡礼もバスや自転車を使って移動して神社とか景色とかを巡るわけでしょ。そうするとすごく土地に根ざしてきますよね」
養老「きっかけは何にせよ、やってみるのが一番いいと思います。無理することはないけれども。ちなみに、僕は今から移住するんだったら台湾の台東にしたいなと思っています。台湾の西側は人が大勢いて、大都会になっちゃっていますから、東側は海も近いし山はすぐ後ろにあるしでいいですよ」
名越「この本を読んでいただいて、そういう考え方をもっと身近に持っていいんだって思ってくれたらいいですね。都会にしがみつかなくてももっと違う生き方もあるし、都会と田舎を往復してもいいわけです。ライフスタイルに幅が出るきっかけになったらうれしいですね」
(取材・文:河嶌太郎)