メタバースで生まれた新しい仕事や職業は?「5年以内に訪れる」未来像も
いくつかの人生を生きる時代?驚くべきメタバースの可能性
セッションでは“メタバースで生まれた新しい仕事・職業”と題してトークを展開した。登壇者らに共通したのは「AIやメタバースを使いこなす人材」というキーワードだった。
中川氏は「クリエイターの間ではAIが敵なのかという話もよく出るのですが」とした上で、「敵ではなくて、クリエイターの作品づくりの速度を上げたり、幅を広げたりするいい材料になる。ストーリーを作ったり、作品に深みを出すのはやはり生身のクリエイターじゃないとできないので、我々にとってプラスになることはあるのかなと思う」と意見した。また、新しい領域としては音楽プロデューサーとの会話を紹介し、「何か音楽を作って、自分の満足する歌声のアーティストに出会えなかったとき、一番しっくりする声をAIで作り出せば、ひとつの作品づくりのきっかけになるんじゃないか」とも話した。
道下氏は旅を通した行動変容に着目。「日本ひとつとっても、東京もあれば、富士山、屋久島、北海道などいろいろあるわけで、今回富士山はリアルで登るけど、屋久島にはメタバースで行こうかとか。お土産はメタバース上で買って、全部羽田空港に持ってきてもらうとか。そうやってリアルとメタバースが混在する体験も面白いんじゃないかなと思う」と予想した。
メタバースに特化した法律相談サービスを開発する横山氏はコミュニケーションの変化に言及した。「これからの10代・20代はリアルもメタバースのコミュニケーションもどちらも普通という感覚になっていくと思う。たとえば、弁護士事務所まで行って弁護士に相談し、裁判の手続きに進むというのが、すべてデジタルで完結する、ということが当然起こってくる。コミュニケーションの取り方も大分変わるのだと思います」と、士業の未来を予測した。
一方、人生観すら変わるのではないかという平氏の予測。メタバース空間はダイバーシティ&インクルージョンな世界観を持つといい、「アバターで自分のなりたい姿になれますし、ハンディキャップを持ってる人は自由に飛んだり跳ねたりできるので、そういった意味では、自分の個性を発揮できる場所にもなる」とした。また、今後大きな経済圏として機能していけば「当然メタバースで働く人が出てくるので、リアルとメタバース、いくつかの人生を同時にパラレルで生きていくという時代になる。複数のアバターを持っていて、今日は遊ぶのか、今日は仕事するのかという、そういう世界になっていくんじゃないか」と意見し、個人の生き方への変化にも言及した。
“デジタルツイン”の活用と未来像
議論は“デジタルツインによる現実生活の進化”についても及んだ。デジタルツインとは、仮想空間に現実の世界を再現して様々なシュミレーションを行って現実世界に反映させるモデルで、主に製造業や都市開発で近年注目を集めている。
平氏は「日本は首都直下型地震や南海トラフ地震が予想されているので、事前に災害が起こったときの人流や被害状況をシミュレーションしておくことは重要。これをリアルな防災訓練と連携して、どう対応していくか。こうした政策を進めていくことになると思います」と話した。
また、横山氏は逆に現実生活からメタバース生活への移行も進んでいくとし、「今後普及していく上で、メタバース上で買い物をする、ゲームをする、NFTで換金できる、そして、仕事ができるといったように、メタバースに移行するインフラを作るだけで、世の中が一気に変わっていくような気がする。ここ最近のAI技術の進化や世の中の動きを見ていると、5年以内には来るんじゃないか」と話し、将来像に期待を寄せた。
「BEYOND 2020 NEXT FORUM」は、2020年以降の日本の活性化を目的に、ダイバーシティ、イノベーション、スタートアップ、エンターテインメントなどのテーマのもとで、各界、各世代で活躍中の有識者で構成されるメンバーが中心となって、2019年3月にスタートした。その後、内閣府の「beyond2020プログラム」認証事業となり、2020年9月から外務省の後援、2022年9月より改めて内閣府後援も加わり、毎回さまざまなフォーラムが行われている。
プログラムの模様はYouTube「TOKYO HEADLINE《ACADEMY》チャンネル〈政治・ビジネス・SDGs〉」チャンネル(URL:https://youtu.be/7ea3_eCQ1po )で2023年9月2日19時より配信。