元バレーボール女子日本代表の栗原恵さん「普段からのコミュニケーションと共存意識が大事」【関東大震災から100年】

(撮影・蔦野裕)

個人の力は自助、チームワークは共助につながる

 コミュニティーをチームとしてとらえると災害時における自助・共助・公助というのはスポーツにおける個の力やチームワークといったものと重なる部分があるのかと思うのですが。
「バレーボールはチーム競技なんですが、個の力ももちろん大事。個人としては個の力を高めるんですが、戦うとなるとチーム力が非常に問われるスポーツなので、そういった意味でまずコミュニケーションの面を大事にするということで、チームのメンバーとしっかり目を合わせて、アイコンタクトをしてコミュニケーションを取っていくということはすごく大切にしていました。人って目で語るものがすごく多いので、目を見ると“この選手はさっきミスをして焦っているな”とか“今はすごく自信を持っているからトスを集めても絶対に決めてくれるだろうな”とか何となくの感覚が分かって来るんです。目でパワーを送ることもありますので言葉以上に目を合わせることの意味というのはすごくあるように思います」

 チームワークというものの大事さを感じます。
「目だけではなく、さりげなく背中に手で触れられるだけで落ち着いたり“一人じゃないんだな”と思って戦える部分もすごくあります。防災の面にどうつながるかという部分では、みんな“自分は絶対に大丈夫”とか“自分にはそんなことは起こらない”と思いがちだと思うんです。スポーツでは、いつどういう場面で自分が出るか分からないので、常に準備して出番がなくてもそこに備えて練習していくことがすごく大切なんです。なので、そういった備えという意味でいうとつながっている部分はあるのかなと思いますね」

 先ほどのリハビリ中に地震に遭った際のエピソードはまさに「共助」の心で助け合ったといえますね?
「まさにそうですね。お皿が全部落ちちゃって、食堂の一人の女性の方がパニックになっちゃったんです。どうしようってなった時に一緒にトレーニングしていたサッカー選手の男の子が“落ち着いてください!”って言ったんです。その子が大きな声をかけたことで、みんなの空気が一瞬で変わった。誰かが意思を表示してくれるって、すごくまとまる力なんだなってその時に思って、すごく助けられました」