東京湾の水位を相互バックアップ体制で管理!湾岸エリアを浸水から守る高潮対策センター【関東大震災から100年】
【高潮対策センター・辰巳水門・辰巳排水機場】
閉鎖性が高く水深の浅い東京湾の最奥部に位置する東京港は、高潮などの影響を受けやすい地形である。その背後には明治末期から昭和40年代後半にかけて行われていた地下水の汲み上げや天然ガスの採掘などにより発生した地盤沈下の影響で低い土地が広がっているうえ、高潮が発生していない通常の満潮時でも海面以下となる、いわゆるゼロメートル地帯が23区の約2割(124km2)に及んでおり、そこには約150万人が生活している。つまり東京湾は高潮が発生しやすく、湾岸エリアは甚大な被害を受けやすい地形といえる。
一方で、主に海底で発生する地震に伴う海底地盤の変動などにより引き起こされる津波は、湾の入り口付近が狭く内側が広い東京湾の場合、最奥に位置する東京港には津波は伝わりづらく、影響を受けにくいとされている。
そのため東京湾には、水門、陸こう、防波堤、排水機場など防災機能を持つ海岸保全施設は低地帯を囲うように設置され、浸水被害を日常的に防いでいる。
運河に設けられた「水門」や陸地での浸水を防ぐ「陸こう」などの管理業務を担うのが、辰巳と港南の二カ所にある高潮対策センターだ。センターでは水門15施設のほか、排水機場2施設、陸こう26施設などを沿岸5区(中央区、港区、江東区、品川区、大田区)に配置し防災体制を敷いている。
水門の開閉操作は高潮対策センターから基本的に遠隔操作で行う。通常は辰巳の高潮対策センターが司令塔となり、港南の第二高潮対策センターとそれぞれの管轄の水門を操作しているが、どちらか一方のセンターが機能しなくなった場合にも、もう一方のセンターが全水門の操作を行うことが可能。この相互バックアップ体制に加え、万が一、両方のセンターからも遠隔操作ができなくなった場合には現地で「機側操作」を行う。一つの門は重さ約70~75tあり、手動により自重で閉門することができる。センターでは20戸の職員住宅を備え、常時、約40分以内に手動で水門を閉める体制を整えている。
海からの水の流入を防ぐため水門を閉めると、雨水・下水などから流入する水によって囲われた内水域の水位が上昇する。その水は水門閉鎖後、排水機場の巨大なポンプにより外水域へ強制排水される。辰巳排水機場では、5基の排水機を備えており、25メートルプール1つ分(約225t)の水を最短約2秒で排水することができる。港湾局が管理する排水機場は全部で2か所、計12台の排水機が設置されている。
高潮は主に、台風などの低気圧の通過や風の拭き寄せによる潮位の上昇を要因として発生する。常に高潮の脅威にさらされている東京湾を、二重三重の備えと設備で守る東京の高潮対策。個人でもハザードマップを参考に水害への備えをしておきたい。
辰巳の高潮対策センター。水門の開閉操作を遠隔操作で行う
水門を開閉するための巻き上げ機
万が一、2つのセンターのどちらからも遠隔操作ができない場合は手動で水門を閉じる