北区の小学生が考えた「SDGsの根っこ」とは?「住み続けられる北区」を考える小学生会議で白熱議論

撮影・蔦野裕

 この日は、3~5人ずつ5つのグループに分かれてディスカッション。初対面同士でグループを組んだ子どもたちのために用意されたのがコミュニケーションツール「心臓ピクニック」や「わたしたちのウェルビーイングカード」。子どもたちは、鼓動が伝わることで言葉を使わなくても“心”が伝わるツールや、「感謝」や「思いやり」といったキーワードが書かれたカードを使って自己紹介。開発者である日本電信電話株式会社上席特別研究員・渡邊淳司氏は「これから皆さんは未来の北区について話し合いますが、ぜひ自分だけじゃなくてグループのみんなが一緒に幸せに暮らせる北区を考えてみてください。目の前にいる人もここに住んでよかったと思えるようなアイデアを考えてみてください」とアドバイス。

 瞬く間に打ち解け合って「住み続けられる未来の北区」について一緒に考える仲間になった子どもたちは、さっそくグループワークで活発に意見出し。

 まずは、グループ内で一人ひとりが、未来の北区に必要だと思うキーワードが書かれたカードを2枚選び、自分の意見を発表。その後、グループ内で意見をまとめグループごとの発表へ。

 発表では、さまざまなキーワードの中から「住み続けられる未来の北区に大切なこと」、「そのワードを選んだ理由」「そのために明日から自分が何ができるか」をプレゼン。

「大切なことはいろいろありますが、その根っことなる“価値観”が大事」といった根本的な考え方を模索したグループや、「外国の学校に通った経験から、日本に暮らす外国の子どもたちや孤立しがちな人を助ける北区ダイバーシティプロジェクトを立ち上げる」といった具体的なプロジェクト案を作成するグループまで、さまざまなアイデアがそろった。

 発表後には質疑応答も設けられ、大人の審査員だけでなく参加した他グループの子どもたちからも次々と鋭い質問が。

「協調が大事だと思う。北区内の公民館や学校に行って、いろいろな人と話すという“来たく”なるスタンプラリーを小学生で企画します。全部集めると、しぶさわくんのバッジをもらえます」というグループには「バッジなど、けっこうお金がかかると思うがどうしますか」という質問が上がり、「小学生が企画するので、小学生がイラストを描いて、それをプレゼントすることにします」と回答。子どもたち同士で、課題の指摘と改善案をやりとりする姿に審査員も感嘆。

「思いやりが大事」というEグループは、少年や老人、けがをした人などいろいろな立場の人が思いやりの輪でつながっていく様子を演劇にして発表。「情けは人の為ならず!」と締めくくると会場からも大きな拍手が起こった。

 この日、審査員を務めたのは北区長のやまだ加奈子氏、北区教育長の清正浩靖氏、一般財団法人ピースコミュニケーション財団代表理事の一木広治、一般財団法人ピースコミュニケーション財団理事/前消費者庁長官の伊藤明子氏、認定NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン事務局長の潮崎真惟子氏。

 最優秀賞を受賞したのは「外国の学校に通った経験から、日本で暮らす外国の子どもたちや孤立している児童と交流を持つ“北区ダイバーシティプロジェクト”を立ち上げます」と提案したBチーム。やまだ区長は「具体的なステップを示してどう問題を解決していくか示されたのが素晴らしかった」と評価。Bチームの水野すみれさん、吹訳悠眞さん、平井陸さんも今日の体験について「自分たちで未来のことを考えられるのは楽しかった」「一人だけだと難しいけどみんなで意見を出し合って考えるとすごく進んだ」「学校でも環境のことを授業で習ったけど、ここまで具体的に考えたのは初めて」と笑顔。今度は「平和な世界にするために、もっと具体的に考えてみたい」と意欲を見せていた。

 また急きょ、プレゼンテーション賞が設けられ、演劇形式で発表したEチームが受賞した。

 大学生のサポートスタッフに支えられながらも、自分自身の考えや疑問を口にしたり、プレゼンの方法や時間配分に気を配ったりと、自分たちが暮らす街の未来について考考えるワークショップでさまざまな気づきを得た様子。

 最後に、やまだ区長は「短い時間の中で、初めて会うお友達と、意見をしっかり言い、相手の話を聞いて意見をまとめられたこと大変すばらしかったです」と子どもたちをたたえ「住み続けられる北区を目指して、今日の皆さんのアイデアをいろいろな場面に生かしていきたいと思っています。皆さんもぜひ、今日発表してくれたようなアイデアや思いを、いろいろなところで発揮してください」と期待を寄せた。

 また、この日は潮崎氏による世界のSDGsへの取り組みについての講義も実施。子どもたちが好きなチョコレートを題材に、ガーナのカカオ農家の子どもたちが児童労働によって学校に行けていない現状などを伝え、フェアトレードの意識を紹介した。

 この日、最優秀賞に選ばれたグループは3月24日に行われる都庁での会議への参加権や都内施設のチケットなどが贈られた。