都医・尾﨑会長、災害時のサージキャパシティ「被災者に介護と医療を提供できる場所が必要」
東京都医師会は2月13日、都内にて今年初の定例記者会見を行った。
尾﨑治夫会長は、冒頭でパンデミックや災害時の医療体制について「コロナの波がくる度に病床がひっ迫する原因は、サージキャパシティ(有事即応能力)がないからだという話をずっとしてきた。東京都でも1000床規模の臨時医療施設を作ってもらいたいという話もしてきたが、今までなかなか具体化されないままでいた」と言及。
「東京都として、日頃から1000床クラスの空き施設を作っておくのはハードルが高いということはあると思うが、能登半島地震を経験してさらにパンデミックや災害時に臨時医療施設の存在が必要なのではないかという思いを強くした」
具体的な設置について、東京都病院協会の猪口正孝会長と協議したとして「都内に大きな施設を一つ二つ作っても、パンデミックや災害時にアクセスが悪いのではないか。そうであれば見方を変えて、特別区は区ごとに一つずつ、多摩地区は保健所単位ごとにそれぞれ一つにして、規模は現在の高齢者等医療支援型施設くらいでいいのかもしれない。そのほうがアクセスしやすいだろうという話が出て、臨時医療施設については今後そういった形で作っていくことを働きかけていきたい」との考えを示した。
施設には廃校予定の校舎や使われていない行政施設などを転用し、運営は行政や保健所、地区医師会が連携して東京都医師会が協力。スタッフは地区医師会や病院協会などが確保し、東京都には財政支援を依頼するなどのプランを明かし、能登半島地震において高齢の被災者が多いことに触れ「(高齢者は)持病を抱えていて要介護状態の方がたくさんいる。被災者に介護と医療を提供できる場所が必要ということを考え、新しくこういった施設を提唱していけたら」と語った。
さらに、大規模災害時の避難所について「相変わらず体育館などを中心に、皆さんが集団で寝ている状態になっていて、そうした中で血栓ができたり災害関連死が起きたりする危険があると思う。ヨーロッパなどを見ると、災害時は基本的にホテル療養になっているので、日本にもそういった体制を整える必要がある」としたうえで「東京都にも東京都医師会にもコロナ禍で宿泊療養を行った実績があるので、ホテルと契約を結んで災害時に避難所として使用できるといったアイデアがあっていいのではないか」などと提案した。
最後に、感染症対策として「いろいろな意見があるが、コロナのパンデミックの中でmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンの果たした役割は非常に大きいと考えている。私どもの医療機関では今、特に肺炎球菌や帯状疱疹、風疹といったワクチンを希望する中高年の方が増えている。ワクチンで感染症を予防することの重要性が認識されてきたのではないか」と述べた。