「37年前のトリックが今も読者を驚かせる理由」実写ドラマHuluオリジナル「十角館の殺人」主演・奥 智哉と原作・綾辻行人が語る

撮影・上岸卓史 【奥 智哉】ヘアメイク・岩下倫之 スタイリスト・カワセ136

“実写化不可能”と言われてきたトリック…「監督に拍手」

綾辻「ミステリー小説の寿命というのは案外そういうところに左右されるということを、長くやってきて学習しました。そう考えると“十角館”が今でも読まれているのは幸運なことだなと思います」

 学生×ミステリーという画期的なジャンルの先駆けとなった作品だが、そのトリックは激しい時代の変化にも関係なく、発表から37年経った今でも読者をあっと言わせ、実写化不可能と言われ続けてきた。

綾辻「内片監督とは旧知の中ということもあって、最初にどのように映像化するかは聞いていたんですけど、十分に納得できてはいなかったんです」

奥「ええっ(笑)」

綾辻「でもまあ、ここは内片監督の熱意を信じてみようかと。結果、この試みは成功していると思います。監督に拍手を送りたいですね。ドラマを見てから原作を読んでも面白い作りになっているし、相乗効果が期待できるんじゃないかとも思います。このドラマも、原作と一緒に長く楽しんでもらえる作品になるといいですね」

 ドラマでは、島田 潔(青木崇高)と江南の、原作とはひと味違ったコンビ感を楽しめるのも見どころ。

綾辻「内片監督から、“主演を江南にしたい”と提案されました。原作は特に主役を意識せずに書いたんですが、全5回のドラマにするとなるとそうはいかない。江南と島田のバディ感をもっと押し出したいということでした。僕からは原作から変わらないようにしてほしい部分についてはお願いしましたが、あとは“お任せします”と伝えました。2人の関係性は原作とは異なりますが、ドラマの面白さの一つになっていると思います」

奥「先生にそう言っていただけて良かったです!」

『十角館の殺人』から始まった「館」シリーズは現在執筆中の「双子館の殺人」で10作目となる人気シリーズ。

 ひょうひょうとした島田に、振り回されながらも真相に迫る河南という、原作者も楽しんだというコンビ感に、今後のドラマシリーズ化も期待したくなる。まずは“あのトリック”がどう実写化されたのか、見届けるべし!
(TOKYO HEADLINE・秋吉布由子)