小池百合子東京都知事が語る災害対策、東京発のスタートアップ、そして人材育成
今回の能登半島の地震でも、避難所での生活を余儀なくされている方が多くいます。被害にもよりますが、避難所に行くより家にとどまっていたほうがいい場合もあります。都では、災害による停電時でも、自宅での生活を継続しやすいマンションを“東京とどまるマンション”として登録する制度を作りました。この東京とどまるマンションについて、エレベーターや給水ポンプの非常用電源の設置を都が新たに支援します。ソフトの面では、新しいタワーマンションなどが建つと、旧来の住民の方とあまり日々のつながりがなかったりしますよね。そこでマンション住民の方ともともとその地域に住んでいた方々との合同防災訓練を促すことで、共助を強化していきます。
また今回の地震では、輪島の朝市通り周辺が焼失しました。阪神・淡路大震災の際には神戸市の長田区などで道が狭く、消防車も救急車も自衛隊も入れないといったことがありました。今回の輪島のケースも非常に悲惨な状況でした。狭い道で救助の車も通れない、消火もできないとなると、なす術がありません。道路の幅をいかに拡幅するか、延焼遮断帯の確保が重要です。関東大震災の時も火事で亡くなるケースが非常に多かった。そういったことを防ぐためにも木造住宅密集地域の対策を進めています。不燃領域率という市街地の延焼のしにくさを示す指標があるのですが、令和7年度までに、全ての重点整備地域で70%を目指しつつ、各重点整備地域の不燃領域率を2016年度に比べ10ポイント以上向上を目標に、早急に不燃化に取り組んでいます。今年度から、老朽住宅の建替えに向けた設計・監理費の助成に加え、建築工事費の助成を始めました。これは不燃化特区制度を拡充したもので、その他の整備地域でも区への支援を実施しています。やはり助けも届かないという状況は避けなければなりません。さらに、揺れると電気が止まる、地震を感知する“感震ブレーカー”を木密地域にお住いの方々に配布しています。これにより火災防止につなげます。それから今回の能登半島地震では、内灘町などで液状化による甚大な被害が生じました。こうしたことも踏まえ、都内の戸建て住宅の液状化対策も強化します。
そして、私がずっと取り組んでいるのが無電柱化です。どうしてこの国は考え方を変えないのか、無電柱化が進まないのか、いまだに私はもどかしく感じています。ただ、都の中心部のセンター・コア・エリア(おおむね首都高速中央環状線の内側エリア)では、都道の無電柱化は99%達成しました。今後、範囲をさらに広げていきます。特に区道や私道の工事をどう強力に進めていくかが課題で、区や市などの自治体をしっかりとサポートしていきます。
地震だけではありません。最近は水害も想定を超える形で被害が出ています。都内でも線状降水帯が発生し、これまで想定してきたキャパシティー以上の大雨が何度も降っています。そこで、環状七号線地下広域調節池(建設中)などをうまく結びつけ、調節をするのではなくそのまま流す、いわば新しい川を地下に1本作る方式で、地下河川の事業化も進めています。
さまざまな災害をまとめますと、地震、風水害、火山の噴火、電力・通信の途絶、感染症、この5つの危機に対して、強靭な東京を作りあげます。そのため昨年末、『TOKYO強靭化プロジェクト』をアップグレードしました。総事業規模は17兆円で、うち当初10年間で7兆円を見込んでいます。大規模地震や風水害から都民を守り、100年先も安心な東京を作っていこうというのが大きな中身になっています」