小池百合子東京都知事が語る災害対策、東京発のスタートアップ、そして人材育成

(撮影・須山杏)

 7月30日で2期目の任期満了となりますが、2期にわたり都政に携わってこられた手応えについて教えてください。

「本来は国会で成し遂げるべき課題、例えば待機児童の問題などが注目されました。知事として2016年に取り組み始め、今はほぼゼロです。都政運営のコンセプトとして、セーフ シティ、ダイバーシティ、スマート シティという“3つのシティ”を掲げ、その中から特に人に着目し、Children、Chōju、Communityによる“3つのC”に重点を置き都政を展開してきました。社会全体では人口減が大きな課題になっていますね。私は一人ひとりが希望を実現できる、自分で夢を達成できる、そういう社会にしていく必要があると考えています。そのための環境づくりを進め、さまざまな政策を打ち出し、予算もつけてきました。最近メディアに取り上げられているのは高校授業料の無償化や卵子凍結のサポートなどですが、この8年間、待機児童対策、不妊治療費の助成拡大など、子育て世帯への支援や少子化対策に総力を上げて懸命に取り組んできました。近頃ようやく国が動きだしたかなと思います。衆議院議員時代、国を動かそうと取り組んでいたのですが、なかなか動かなかった。ならば、東京でやろうと取り組んだというのが実態ですね。

 2期目においては、日々コロナ対策に取り組まざるをえなかった。それでも、エネルギー問題、気候危機、少子高齢化など、いろいろ課題解決にも努めてきました。コロナ対策は、高齢者をはじめ重症化リスクの高い方々をいかに守るかが最大の課題でした。つまり、亡くなる方を抑えることに注力し、戦略的に行いました。例えば、特別養護老人ホームなどにワクチンバスをこちらから出向かせ、高齢者の方にワクチンを接種しました。本当にコロナの間では皆さんにもいろいろご協力いただきましたし、都としてできることをいち早く効率的に行ったと思います。

 そして、コロナ禍での東京2020大会の開催ですね。今改めて皆さん、“東京だからできたんだよね”と言ってくださるし、アスリートの皆さんからは本当に感謝されています。デジタル化も進めました。テレワークの普及などは、働き方改革にもつながります。変化の激しい時代、働き手にとっては、自らを磨くスキルアップの時間に充てるなど、自己実現につながっていきます。必要な箇所に都が予算をつけるという経済面でのメッセージに加えて、テレワークやオンライン会議など働き方も含めたいろいろな提案が、具体的に皆さんに伝わったのではないかと思っています。来年度予算では特に、シームレスな子育て支援、介護人材の確保対策などに大きく焦点を当てています。それから2025年からスタートとなる太陽光発電設備の設置義務化については、大手のハウスメーカーの皆さんにご理解をいただき、むしろ“積極的に取り組みます”という返事を企業の皆さんからいただいています。

 いずれにしても、1400万の都民がその力を生かし、持続可能な成長に都市が進むためには担い手が重要です。第7代東京市長の後藤新平は、数多くの名言を残しています。私がよく引用するのは“世の中には大事なことが3つある。一つ目が人、二つ目が人、三つ目が人”というものです。そういう意味では、特に子供は社会の宝であり、世界を舞台に活躍する人材を東京から輩出していきたい。未来を担う子供たちが健やかに育ち、グローバルなコミュニケーションを取り、活躍するよう、教育環境の充実にもしっかり取り組んでいきたいと思っています」         (聞き手・一木広治)

【本インタビューに関連するSDGs目標】
目標4「質の高い教育をみんなに」、目標7「エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」、目標8「働きがいも経済成長も」、目標9「産業と技術革新の基盤を作ろう」、目標11「住み続けられるまちづくりを」、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」

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