非常に強い感染力「はしか」はどんな病気? 国内は排除状態も近年ワクチン接種率低下
非常に感染力の強い「麻しん(はしか)」が世界的に流行し、全国で21人の感染が確認されている。都内でも今年に入って6人が報告されているが「麻しん」とはどのような病気なのだろうか? 東京都医師会理事で感染症担当を務める「かずえキッズクリニック」(渋谷区幡ヶ谷)の川上一恵院長に聞いた。
◆ ◆ ◆
現在、東京都の「麻しん」の感染状況は?
「都内での報告数は6人(4月4日現在)です。東京都は発症者の早期発見と感染拡大を阻止する目的で、患者さん個人が特定されないように配慮しながら、行動歴の情報を発表しています。今回の感染者は幼児から成人までさまざまで、ワクチン接種歴は0~1回および不明となっています。
日本は2015年、世界保健機関(WHO)西太平洋事務局から麻しんの排除状態にあると認定され、その状態が維持されていることに変わりありません。今、日本で発生している麻しんは海外から持ち込まれたウイルスによるもので、患者さんへの遺伝子検査では海外由来の遺伝子型が検出されています。この先、二次、三次……と感染が広がって国内に定着させないためにも感受性者(抗体を持たないかかりやすい人)対策が重要です」
「麻しん」とはどんな病気?
「麻しんウイルスによって起こる感染症で、空気(飛沫核)や飛沫、接触によって感染します。麻しんウイルスの基本再生産数(1人の感染者が免疫のない集団の中で感染させる人数の平均値)は12~18で、1.4~2.5とされる新型コロナウイルスと比べると、非常に感染力が強いことが分かります。
江戸時代には “麻しんは命定め” と呼ばれ、たびたび大流行を繰り返し、命に関わる病気として恐れられてきました。今でも侮ってはいけない病気で、免疫を持たない人が感染すると38度以上の高熱と咳、鼻水など風邪と同じ症状が出て気管支炎や肺炎、中耳炎、脳炎などの重篤な合併症を引き起こす恐れがあります。“自然に感染したほうがいい” などの誤った情報もありますが、先ほどもお話しした通り免疫を持たずに感染すると重篤な合併症を引き起こす危険性があります」
「麻しん」の症状は?
「約10~12日間の潜伏期間の後に発症し、最初は咳や鼻水、目の充血といった風邪症状と38度以上の発熱が2~4日続き、この時期に頬の内側の粘膜にコプリック斑と呼ばれる小さな白い粘膜疹が見られます。熱はいったん37度台に下がりますが、半日後くらいに再び39度以上の高熱が出て全身に赤い発疹が現れ、発疹が出てくる頃から咳がひどくなります。やがて発疹同士がくっついて全身に広がり、色素沈着を残しながら徐々に消えていきます。合併症としてしばしば肺炎や中耳炎が認められ、1000人に0.5~1人の割合で脳炎を引き起こします。罹患後7~10年経って発症する亜急性硬化性全脳炎(SSPE)という、進行性で予後不良な中枢神経疾患を引き起こすこともあります」