「2024年本屋大賞」超発掘本に井上夢人さんの31年前の小説『プラスティック』「これから読む人の中には生まれてない方もいるのでは…」

作家の井上夢人さん

「2024年本屋大賞」の発表会が4月10日、都内で行われ、特別企画である「発掘部門 超発掘本!」に井上夢人さんの『プラスティック』が選ばれた。

 この「超発掘本!」は洋の東西、ジャンル、さらに刊行の新旧を問わず、書店員が「売りたい」と思った本、常日頃から思っている本を推薦するもの。

 同作は1993年に双葉社の「小説推理」という雑誌の中で連載され、その後、2004年に書籍化された。

 井上さんは「31年前の小説。びっくりしました。よくよく考えると、これから本を手にしていただいて読んでいただく方々の中には30年前には生まれてない方もいらっしゃるのではないかと思います。恐ろしいことです。小説家はみんな、自分が書いたものが少しでも多くの方に読んでいただけるということを希望しているし、同時になるべく長く読み継がれてほしいと考えていると思う。ところがなかなかそういう具合にはなりませんで。そうは問屋が卸さないという状況が非常に多くの本で展開されます。せっかく本にしていただいたのに、1カ月2カ月すると、すーっと消えて行ってしまいます。どこかに行ってしまうのか。作者には何の断りもなく、何の打ち合わせもなく消えて行ってしまいます。それが今回、こうやって30年も前に書いたものを掘り返していただき、超発掘本という金襴緞子の帯をつけていただいて、日に当てていただくチャンスをいただけたというのは、作者としてこれ以上のものはない喜びだと思います。これが作家冥利に尽きるということなのかなとつくづく感じています。今回はありがとうございます」などと挨拶した。